私は近頃「衝撃のラスト」に弱い。そう書いてある本は、大抵買ってしまう。Xで読了ポストを見かけてもしかり。
この本も、Xで読んだ方の感想を読んで、ラストの衝撃がすごい、などと書いてあるのを見て買ってしまった。
本の帯を見ても、こんな感じに↓

書いてある。
さて、この「衝撃のラスト」を読む前に知ってしまったら、面白くないだろう。だから、もちろんネタバレなしで書こうと思う。
あらすじ
主人公の柊一は、いとこの翔太郎と裕哉の家の別荘に遊びに来ていた。他に柊一や裕哉の大学時代の友達4人も一緒だ。裕哉が面白い建物を見つけたからと、皆でそこへ向かったところ、たどり着いたのは巨大な地下建築だった。
まるで沈没船のような不気味な建物に入った彼ら。そこへ道に迷ったという矢崎親子3人も合流した。山奥であり、夜になってしまったので、ここで一泊する事になったのだが、そこで大地震が起こる。そのせいで、大きな鉄の玉が出入口を塞ぎ、地下建築から出られなくなってしまう。
色々調べた結果、ここから脱出するには1人が犠牲になって鉄玉を落とす必要がある事が判明する。鉄玉を落とした人は、そのまま閉じ込められてしまうのだ。
地下建築は徐々に水没していく。タイムリミットは1週間。その間に、犠牲になる1人を決めなくてはならない。そんな折、裕哉が首を絞められて殺されてしまう。
こうなると、犠牲者は殺人を犯した人物にすべきだ、という事になる。そこから犯人捜しが始まる。だが、第2、第3の殺人が起こり、謎は深まるばかり。翔太郎が推理を進め、とうとう犯人を言い当てる。
作風
なんだか、妙な感じだった。純粋なミステリーとはこういう文章なのか。
いまいち、乗らない。流れるような文章でも、引き込まれる文章でもない。読みやすいと言えば言えるかもしれないが、あまりサクサク進まないような気もする。
しかも、割と事件が起こるまでが長い。きっと、地下建築の形状の説明などが長いからだろう。私が空間把握が苦手で、どういう構造になっていて、何メートルくらいで、などという説明が頭に入らず、余計に長く感じたのかもしれない。
しかし、事件は起こる。そして、私は誰が犯人なのかを考えながら読み進める。つい「衝撃のラスト」に引っ張られ、意外な人物が犯人なのだろうと思って、あり得ない人(例えば主人公とか、今まで出てきていない人物とか)を思い浮かべたり、その他柊一と近しい人が怪しいとか、あれこれ考える。が、当然ボロは出ない。
衝撃のラスト
犯人を当てる人はいても、動機を当てられる人はなかなかいないだろう。
最後の最後で殺人犯が特定され、本人も認める。そして、いよいよ脱出という段になって、犯人の語りが入る。ここが、衝撃の事実なのだった。
うん、確かに驚いた。犯人は、ハッキリ言って一番可能性の高い人物だった。そんな事だろうと思った、というか。だが、動機は全く予期せぬものだった。しかも、探偵役が……いやいや、ネタバレ厳禁。
プロットはお見事。もう、最後に読者に衝撃を与える為に考えられたストーリーでしかない。建物の構造も、まさに最後のラストを書く為に作られた物だった。図解してあったのも頷ける。何とか私の頭の中にも建物の構造が描けていた。そして、閉じ込められていた1週間は長かった。
帯にあるように「一生もの」かどうかは分からない。いや、そこまでじゃないのかなと思う。が、確かに衝撃は走った。「そう言う事~!?」と叫びたくなった。しかも、主人公に感情移入していると危険だ。すごく辛くなるに違いない。
これから読む方は、是非犯人とその動機について考えながら読んでみて欲しい。挑む価値はあると思う。
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