大阪・関西万博2025のボランティアをするため、大阪のホテルに5泊した。ボランティア活動が夕方からだった4月17日の木曜日、午前中に中之島へとやってきた。
中之島美術館へ
大阪駅の近くのホテルから、中之島へは歩いて行ける距離だった。
その日は頭が痛かった。ちょっと暑かった。でも、風があって歩いていて気持ちの良い気候だった。

橋を渡る時、川沿いに桜が見えた。葉桜でも綺麗だ。


大阪には何度か来たことがあったが、中之島へ来たのは初めてだ。橋から眺めた感じは、東京の丸の内のようだ。いや、島だからな。パリのシテ島か、ニューヨークのマンハッタンみたいと言った方がいいか?

そう、そのシテ島のようなマンハッタンのような所に、白い靴、黒くてパンパンなリュック、しかもリュックのポケットには水筒、といういでたちで来てしまったチョコナッツ。サラリーマンやサラリーウーマンが行きかう中、ちょっと場違い。
とにかく、中之島美術館へは行かねばならない。美術展のチケットを買ってしまったから。大阪で少しだけ観光をしようと思って、行った事のない中之島へ行ってみようと思った。いくつか中之島に美術館があるのだが、何がやっているかを調べたら、中之島美術館で上村松園(うえむら しょうえん)展がちょうどやっていると分かった。そこで、アソビューのポイントの期限が切れるというタイミングだった事もあり、チケットを予め購入したのだ。
だから、たとえ疲れていても、這ってでも上村松園展にだけは行かなければならなかった。と、言うと大げさだが。
余談ではあるが、とても立派な建物の前を通った。何かと思ったら日本銀行大阪支店だった。その文字が入るように、振り返って写真を撮ったのだった。今ここにその写真を載せようかと思い、人の顔が写り込んでいないかどうか拡大して見たら……警備員さんがこちらに向かって手でバッテンを作っていた。
え、そんなの全然気づいていなかった。つまり写真を撮ってはダメという事なのか?ヤバイヤバイ、これが別の国だったらスパイ容疑で捕まっていたところだった。怖っ。とにかく写真をここに載せるのは辞めておこう。
ミャクミャクのマンホールも見つけたが、後でいくらでも見られると思っていて写真を撮らなかった。何しろサラリーマンが行きかう中だからね。でも、ついぞその後は見かける事がなかった。やっぱりマンホールの写真も撮っておけばよかった。こういうのを「旅の恥は掻き捨て」と言うのだね。
お、これは何だ?万博カラーじゃないか?

さて、中之島美術館に着いたようだ。

2階から入るみたいだ。上がっていくと……

猫?この子と一緒に自撮りしようと思ったのだが、上手く行かなくて断念。しかし日差しが暑い。
建物に入り、ロッカーにリュックを入れ、やけにのんびりと上るエスカレーターに乗って1つ上がると、看板があった。美しい絵だ。

更にこちらも。本当は、前に立って記念撮影する場所なんだろうけど、1人で行くとねぇ。

第1章 人生を描く
先に言っておくと、この展覧会は写真OKの絵と、それ以外の絵とあった。私がここに載せるのは、もちろん写真OKの絵だけという事になる。全体の中ではごく一部の作品のみという事になる。
今年は上村松園生誕150年の年らしい。上村松園は京都に生まれ、明治から昭和にかけて活躍した日本画家である。晩年に女性として初めて文化勲章を受章した。前から彼女の描く美人画は好きだったが、これだけ多くの松園の絵が集められた展覧会は初めてだ。
まずは「人生」というテーマでの展示。松園は結婚せず、息子を産んだ。その息子は日本画家の上村松篁(しょうこう)。そして孫、上村淳之(あつし)も日本画家となった。
年表のところでおば様方がお話をしていた。かなり噂になったのよね~、大変だったのよー。その時代に生きていたような口ぶりだったが。つまり、噂になるような相手との子供を産んだという事らしい。
松園は商家の生まれだが、母親からは画業をずっと応援してもらっていたそうだ。その為、母への感謝や愛情が籠った女性の絵も多いとか。


↑月蝕の宵。鏡を覗き込んでいる女性や子供が描かれ、楽しそうに生き生きと描かれた左隻(上)に対して、右隻(下)には女性の立ち姿ひとりを端正に描いている。右隻の女性は門下生の歌人、九条武子がモデルを務めたという。

↑しゃぼん玉
当時、画家は男性が圧倒的に多かったわけだが、男性が描く美人画のように若さや艶やかさを強調するのではなく、松園の美人画には温かな愛情やまなざし、生き方への敬意が込められている。
第2章 季節を描く

↑花

↑三美人之図。服装や髪型で、三世代の女性だと分かる三人。後ろのおばあさんは良く見えないが。美人図と言っても、若い女性だけではないという事が分かる。

↑花のにぎわい

↑初音図(はつねず)

↑桜可里図(さくらがりず)

↑春さめ

↑菊寿。この絵は松園っぽいかな?とっても素敵。菊寿とは9月9日に行う節句で、菊花酒を飲み交わして長寿を願ったとか。

↑良夜吹笛図(りょうやすいてきず)。松園初期のうねるような太い線も見られるが、顔立ちの柔らかさから過渡期の作品と思われる。女性の左手薬指には指輪が。この当時から結婚指輪の習慣が。

↑待月(たいげつ)。後ろ姿ながら美しい。
第3章 古典を描く

↑草紙洗小町(そうしあらいこまち)。能の演目「草紙洗小町」を題材とした作品。描かれているのは小野小町。能面のように描かれた顔は、感情を抑えつつも決然とした表情。

↑古代男舞之図(こだいおとこまいのず)。なんか、とっても素敵。オスカル的な?

↑静(しずか)。静御前よね。義経の愛人だった白拍子。松園は何度も静御前を描いているそうだ。勇気ある女性として共感したのかもしれない。

↑古代汐くみ(こだいしおくみ)

↑汐くみ。謡曲「松風」から派生した日本舞踊の演目「汐汲」に着想を得たもの。須磨の浦でかつて公卿、在原行平に愛された海女の姉妹、松風と村雨をめぐる物語である。この作品では、松風が行平を想いながら天秤棒に汐汲み桶をつけて踊る姿が描かれている。行平が海辺の松に衣を掛けて去ったことから、桶には松が描かれ、そこには「待つ」の意味も込められている。
特集 松園による多様な作品
松園にしては珍しい花鳥画

↑朝顔図

↑柳陰鵲之図(りゅういんかささぎのず)。師、鈴木松年(しょうねん)の許しを得て幸野楳嶺(こうのばいれい)の塾に入った事のある松園。松年塾で身につけた大胆な筆遣いと、楳嶺風の柔らかい筆致が共に生かされた作品。
第4章 暮らしを描く

↑舞仕度。この作品を描く為に、松園は祇園に通って舞子を写生したという。座っている三人のくつろいだ様子に対し、立っている女性は緊張している様子。着物に描かれた花などから、秋だと思われる。主題に対して表現が新しいと思わないか?風俗もそうなのだろうが、登場人物の心理を描いているところがすばらしい。

↑新蛍(にいぼたる)。これも松園らしい。構図が素晴らしい。人物を右端に寄せ、右の袂(たもと)を持って女性を振り向かせているが、それにより着物の全体を見せるという秀逸な構図になっている。69歳の時の作品だそうだ。着物の全体というか……袖全体かな?
下絵も多数展示されていた。下絵なのに髪のツヤまで白く描いていて、すごいなーと思ったら、出来上がった絵にはツヤがなかったりしたのだが。
写真はないのだが、「鼓の音」という作品は、ニューヨーク万博に出店されたとか。きっと見た事がある作品だと思う。いやー、お腹いっぱい観たぞ。上村松園、美しい女性ばかり描いているわけではなかった。でも、大方美人画だね。
ミュージアムショップ
展示を観終わり、ショップへとやってきた。ミュージアムショップは、買わなくても見るだけで楽しい。
何しろお土産さえ買い控えるほどに、スーツケースのスペースがない。だからやっぱり買わない事にした。だが、素敵な栞を見つけてちょっと心が動く。義母へのお土産の一つに、ミャクミャクの栞を購入したのだが、義母にはこっちの方が良かったかなーとか思いつつ、眺めるだけで出口へ。
すると、出口の所にQRコードがあり、LINEの友達追加をすれば抽選でブックマーカーが当たる、と書いてあった。女性の二人組がそこで抽選に挑戦していた。そして、ダメだったようだ。
「まあ、当たらないよね」
などと言って二人は去っていった。私も一応抽選に挑戦してみた。一応ね。もらえる物はもらう主義で。
当たった―!すごいじゃん、私。その当たり画面を開いたまま、レジへと戻った。何も買わないのに、と少し引け目を感じつつ、レジでその画面を見せたら、伏せた状態でブックマーカー、つまり栞を一枚くれた。めくってみると、なんと先ほど手に取ったもの。やったね。
写真を撮ったのはこの時ではないが、ここで栞の写真を載せておく。



ツルツルとした、しっかりした質感だ。下敷きみたいな感じかな。うん、これは私の物だな。フフフ。
レストラン
ミュージアムショップを出て、ロッカーから荷物を取り出すとちょうど12時だった。ランチを食べて、万博会場へと向かうのだ。しっかり食べなくては。
この近くにハンバーガーのお店があるらしい。行ってみたい。地図を検索して向かう。本当にすぐなのだ。
が、ちょっと心配。この街の雰囲気だ。きちんとした服装の男女が行きかう昼休み。こんな格好でお店に入ったら浮くのでは。福島駅の周辺まで行った方がいいかもしれないが……。でも、良さげなランチはこの辺の方があるし。迷う。
一応ハンバーガーのお店の方へ行ってみたが、入り口が分からない。建物の看板というのか、何階に何があるかが書いてある物を見てみた。
あ?美術館の中にレストランがある?おかしいな。見かけたら入ろうかと思っていたのに。全然見なかったが。
そうか!最初に「美術館は2階から入る」と思ったが、1階はレストランだったのを思い出した。そうかそうか、あの外階段を下りればいいのか。
素敵な美術館ではあるが、美術館の中ならばサラリーマン、サラリーウーマンばかりという事はなかろう。平日に美術館に来るのはご老人ばかりではないか?(偏見)
ということで、そちらへと向かっていった。外にテラス席があるような、素敵なレストランではある。もしかして、すごく高額だったりして?
テラス席を越えて扉を開けて入って行くと、その中にレストランの入り口があった。いきなりお店の中ではなかったのでホッとした。店の入り口にメニューがある。恐る恐る見てみると……1500円前後のメニューがいくつかある。大丈夫そうだ。
入って行くと、私の恰好など構わずに気持ちの良い接客をしてくれた。すごくおしゃれなレストランであるが、両隣の席には老夫婦が座っており、その隣には高齢の女性客が座っていた。うん、大丈夫そうだ。
その高齢の女性客は、店員さんに大阪城への行き方を聞いていた。そう、ここなら観光客がいる。ホッとするね。私も観光客だから。
野菜を食べなければ、と思っているのだが、外食だとなかなか難しい。サラダを注文すればいいのだが、意外と高いし多すぎるというか、サラダだけにするのも嫌で(笑)なかなかね。
というわけで、クロワッサンサンドにした。税込みでも1200円くらいだった。そして出てきたものは……

ジャーン!すごい。映える。思ったよりも大きい。そして運んできた店員さんは、
「よろしければナイフとフォークでお召し上がりください」
と言った。おぉ、かぶりつくのではないのか。オシャレじゃないか。そしてこんな風に卵を切れば……

更に映える。
クロワッサンはサックサクで、すごく美味しい。こういうクロワッサンは久しぶりだ。まあ、中身はマッシュポテトとサラミ、ピラっと一枚のレタス、卵、と野菜は少なすぎるが。
お腹いっぱいになった。やっぱりサラダを追加するのは辞めよう。伝票がないと思ってそのままレジへ行くと、注文の為のQRコードが書いてあったアクリルスタンドが伝票代わりだったそうだ。ホールの店員さんが私の注文したものを覚えていて、それがなくてもレジで支払いができたのだけれどね。
しかし、こんなオシャレな物を食べてそのお値段は、けっこうお得だった気がする。良い店だった。美味しかったし、店員さんも親切だし。
そして私は、福島駅まで歩いた。今日もまた、歩き過ぎて後々大変だったのだが、まだバテていないチョコナッツであった。
さっきとは別の橋を渡ったが、振り返ったらあの万博カラーの模様のビルが見えた。先ほど写真を撮ったのとは別の方角から見ている。派手なビル、いいね。関電ビルディングらしい。

さて、これで上村松園展のレポは終わりである。やっぱり観に行って良かった。お近くの方はもちろん、万博を訪れた方もついでに足を伸ばしてみては?
中之島美術館の上村松園展は6月1日まで。公式ホームページはこちら→生誕150年記念 上村松園 | 大阪中之島美術館