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【読書感想文】鈴木おさむ「もう明日が待っている」

概要

鈴木おさむ氏は放送作家として、SMAPと長く関わって来た。彼がSMAPと一緒に長年作って来たSMAPXSMAPという番組の、開始から終わりまでのドキュメントである。

アイドル冬の時代と言われた時代にデビューしたSMAPは、それまでのアイドルのように歌番組にだけ出ればいいというわけにはいかなかった。彼らはドラマやバラエティーに出て行った。出るしかなかった。

そういうアイドルの姿をよく思わない人達もいる中、それまでの常識に風穴を開けてきた彼ら。そして、そんな彼らを力強く導いてきたマネージャーのイイジマサン。午後22時にアイドルが主体となる番組をもつことも、新たな冒険だった。

しかも、始まりと同時にモリクンの脱退話が持ち上がり、番組が始まってすぐに実際に脱退する。また、タクヤの結婚も発表される。しかも、発表する前にすっぱ抜かれるという事態になったのだ。それから、東日本大震災がある。あの時、東京から逃げようと思ったという作者。しかし、イイジマサンはSMAPに生放送をさせる。それから、東北へ赴いての収録。ピンチと奇跡の連続

そして、20年続いた番組も、とうとう終わりを迎える。世の中にSMAPの解散報道が流れ、それについて説明するという生放送を行う事になるが、直前まで話す内容が決まっていなかった。何とか決まったものの、その後に事務所からのダメ出しが入る。この言葉を言わせろと言う圧力。その言葉とは、メンバーの1人が社長に謝る機会を作ってくれたおかげで「今、僕らはここに立ててます」というもの。

「最悪な放送」の後、SMAPは解散する。そして、作者は放送作家を辞めるのだった。

ドラマティックで臨場感あふれる

作者の視点で書かれる物語は、臨場感にあふれている。作者から見たリーダー、タクヤ、ゴロウチャン、ツヨシ、シンゴ、そしてイイジマサンの、台詞や動作は我々の脳裏に情景を描かせる。

特に、震災の辺りを読んでいる時、途中で家事をしたり眠ったりしていたら、ふとした拍子に、まだ今が震災直後の混乱期のような気がしてしまうほどだった。

ちょっと感動的に書き過ぎでは、と思ってしまう事もある。だが、気づけば涙が溢れていた。リーダーはいつもメンバーの事を一番に考えているとか、タクヤはブレないとか、ゴロウチャンは何かあった時にいつも普通を演じてくれるとか、ツヨシは優しいとか、シンゴはみんなを見守り引っ張っていってくれるとか。彼らの特性を端的に教えてくれた。

私は一時期SMAPのファンだった。だから彼らの描写を読むとそうそう、と思って面白い。セリフを読めば声まで聞こえてくるようだ。しかし、SMAPXSMAPは最初の頃しか観ておらず、解散の報道の事もあまりはっきり覚えていなかった。もう少し詳しく覚えていればよかったのに、と思った。何しろ、実在する人が関係する事だから、あまりはっきりとは書いてくれないから。

SMAPという言葉さえ、帯にしか書かれていない。名前は分かるように出してしまうけれど、局の名前も場所で表し、曲名も出さずに、だけど分かるように書いてある。遠まわしに言っているが、けっこう言っているというか。

まあこれも、かの事務所のかつての社長が亡くなり、その後局が事務所に忖度する事もなくなってきた今だからこそ世に出せたのだろう。メンバーにどれだけ了解を得たのか気になるが。

小説は、危機を乗り越え、それぞれが活動しているという話で終わる。しかし今、またリーダーが危機を迎えている。もしかしたら、芸能界から消えてしまうかもしれない事態に陥っている。でもひょっとしたら、また復活するかもしれない。リーダーはとても「いいやつ」に描かれている。まさか、フジと結託して女性に……なんて事は、この本を読んだ直後には考えられないくらいだ。

今これを読んだ事は、ライムリーなのか、それとも間が悪かったのか。いや、今まさに話題になっている人のお話だから、今読むのもいいかもしれない。彼らが実際どんな人で、どんな舞台裏があったのか。興味があれば、是非↓

もう明日が待っている(2024/3/27)鈴木 おさむ (著)https://amzn.to/42lhHRC