アフィリエイト広告、アドセンス広告を利用しています。あなたの広告への反応が、チョコナッツの収益に影響します。

【連載小説】地球を守れ-Save The Earth-第6話 デビュー曲

ロリポップ!

 植木は、事務所を構えた。いつも違うレッスン場を借りていたが、常に同じ場所でできるようにした。つまり、地下にスタジオがある建物の2階に事務所を置き、毎日夜はそのレッスン場を借りるという契約をしたのだ。
 レッスン場に集まったメンバーに、植木は早速曲作りについて話をした。
植木:「さて、君たちのオリジナル曲を作ろう。だが、作詞家作曲家を雇う金がない。」
植木がメンバーを見渡すと、メンバーはみなキョトンとしていた。
涼:「じゃあ、どうするんですか?それもボランティアを募るんですか?」
植木:「いやいや、曲は君たちが作るんだよ。その方が絶対いい。」
流星:「作詞なら、何とかできるかもしれないけど、作曲は難しいんじゃないですか?」
植木:「誰か、楽器が出来る人はいないか?」
植木がそう問いかけると、お互いを見渡したのち、大樹と瑠偉が手を上げた。
大樹:「俺は、ピアノを習っていたので、多少は弾けます。作曲もまあ、パソコンでやったことあるし、出来るかも。」
全員:「おー!!」
植木:「瑠偉は?何ができるの?」
瑠偉:「あ、僕はギターをちょっと。習ったわけではないけど、独学でちょこっと。」
碧央:「すげーじゃん、瑠偉。」
碧央はそう言って、瑠偉の肩に腕を回した。瑠偉は照れくさそうに笑った。
植木:「そうかそうか。でもな、作詞も作曲も独りでやることはない。みんなで力を合わせて作ればいいさ。それから、振り付けも君たち自身で決めるんだ。振付師を雇う余裕もないからな。」
涼:「やっぱりそうきたか。振り付けなら任せてよ。俺、いつもやってたから。」
光輝:「わぉ、頼もしいね。僕も、新体操やってたから、少しはお役に立てるかも。」
光輝が小首を傾げて可愛く言った。すると、メンバーは一斉に無言で光輝の肩をこづいたのだった。ニヤニヤしながら。
光輝:「なんだよー。」
光輝もそう言って、ニヤニヤした。

 ボランティアの先生は、来たり来なかったりするので、先生が来ない日は、作詞、作曲、振り付けと、順番に取り組んだ。
植木:「歌詞だけどな、デビュー曲だし、我々の目的は地球を救うことなので、それに関連した歌詞にして欲しいんだ。こう、みんなで出来る事からやって行こう!みたいな。」
植木が言うと、
碧央:「俺、この間ゴミ拾いしていて思ったんだけど、あれってさ、みんながゴミを海に捨てるからいけないじゃん。だから俺たちとか、おっちゃんおばちゃんたちがゴミ拾いするわけじゃん?でも、もっと他にやった方がいい事っていうか、助けが必要な所があると思うんだよ。それなのに、誰かがゴミを投げ捨てたせいで、ゴミ拾いに人員を割かなければならないのって、勿体ないと思うんだよね。ただ、ゴミを海に捨てなければいいのにさ。もっと、助けないといけない所に人手を回さないと。」
大樹:「そうだよな。そういうのを、訴えていきたいよな。」
流星:「うん、なるほど。他に何か意見ない?そういうの、まとめて行こうよ。」
瑠偉:「僕はさ、水道を出しっぱなしにする人を見ると、許せないんだよね。水がないとすっごく困るのにさ、大事にしない人がいるのって信じらんない。」
などと、いろいろ意見が出始めた。植木はそれを見て、そっとその場を離れたのだった。

 時間はかかったが、みんなの納得のいくものがとうとう出来た。
流星:「社長、デビュー曲が出来ました!」
流星が事務所へ持って来たUSBを、植木はPCに差し込んで聴いた。すると、植木と内海は驚いた。
植木:「・・・驚いたな。」
流星:「どうですか?」
植木:「いや、驚いたよ。こういう感じだとは思っていなかったものだから。いや、いいよ。うん。オリジナリティーがあって、非常にいい!」
内海:「うん、いいよ。いやあ、驚いたな、僕も。」
流星:「よかった。Save The Earthにふさわしい内容になっていますよね?」
植木:「ああ、そうだな。いやあ、確かに地球を救おうっていう内容なんだけど、こういう感じだとはなぁ、いやあ、驚いた。」
植木たちが驚いたのはなぜか。歌詞は以下の通りである。

― 海にゴミを捨てたやつは誰だ まだ使えるのにすぐに捨てるやつは誰だ
電気も水も排気ガスも 出しっぱなしにするやつは誰だ
お前か 俺か 俺たちか
そうやって なんも考えないで 地球を汚している
いつか 俺たちは自分の首をしめる

木が枯れる 飢餓に苦しむ
空が霞む 目がかすむ
気温が上がる 海水上がる 熱中症! 洪水津波!

地球が悲鳴を上げている 動物も鳥も虫も人も 地球と共に生きている
気づけ 気づけよ 気づいてくれよ 植物が叫んでる 鉱物が叫んでる ―

内海:「ヒップホップかぁ。そう来たかぁ。そうだよな、大樹はDJやってたんだし、涼や瑠偉はヒップホップダンスをやってたんだもんな。」
内海はうなった。ラップ調で始まるダークな感じの曲で、歌詞もひどく挑戦的な雰囲気。植木と内海は、もっと良い子ちゃん的な、アイドル風の歌を想像していたので、とても驚いたのだった。
流星:「今、振り付けの方をみんなでやってますんで。では。」
流星はレッスン場へ戻って行った。植木と内海は顔を見合わせ、ただ笑ったのだった。あいつら、やるな、と。

 涼:「フォーメーションは、全部で5つ。歌う人がセンターに来て、歌い終わったらさっと後ろに下がる。後ろを見ないで下がるんだぞ。」
碧央:「これ、覚えられるかなぁ、俺。」
碧央が自身なさげに言った。
光輝:「大丈夫だよ。曲に合わせて何度もやっていけば、覚えられるよ。」
流星:「おーい、曲のOKが出たぞ。何?ああ、フォーメーション?・・・この紙コピーしていい?」
涼:「流星くん、図を頭で覚えちゃだめだよ。耳と体で覚えなきゃ。」
篤:「そうそう、何とかなるよ。さ、やってみようぜ。」

 涼:「うーん、もうちょっとインパクトのある振りを入れないとダメだなあ。」
大樹:「光輝はバック転とか、できるんだろ?篤くんも宙返りが出来るんだし、そういうのを入れるとか?」
涼:「うーん、でもさ、そういう、アクロバットできる人が間奏とかに披露するのって、他の男性アイドルがやってるじゃん?定番じゃん?うちは、そういうのとは違うものにしたいんだよね。」
大樹:「ああ、なるほど。確かに某事務所のアイドルの定番だね。あと、歌う人と踊る人が別れてるってのも、わりとありがちだよね。」
涼:「そうなんだよ。歌はみんなで均等に割り振ったから、ダンスもみんなで同じように、揃えてやりたいなぁって思うんだよ。」
光輝:「今はさ、歌いながらできるような振り付けしか入れてないけど、間奏のところでは、すっごく速い振りつけを入れてみたらどうかな。おおーってなるような。」
涼:「うんうん、そうだな。おおーってなるようなの、やっぱり入れよう。瑠偉、お前何かアイディアないか?」
瑠偉:「え?僕?うーん、じゃあ、こういうのは?」
瑠偉が今までの振り付けの倍速で手足を動かす。
メンバー:「おぉー!それ、かっこいい!」
流星:「いや、俺にはできそうもないけど?」
涼:「やれるって!大丈夫だよ。練習しよう!」

 数日後、デビュー曲「Shout(叫び)」の振り付けが出来上がり、マーク先生に見てもらった。
マーク:「・・・けっこう難しいの付けたね。いや、でも、完璧にそろえてやったらすごいんじゃないか?うーむ、僕驚いたなー。」
マークは英語でそう言って、やはりうなった。自分たちで作ったにしては、曲も振り付けもなかなか。マークの全身に鳥肌が立った。