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【読書感想文】恩田陸「ネバーランド」~男子のわちゃわちゃかと思ったら~

選んだ理由

本屋を物色していた。決して作者名で選んだつもりはないが、やはり知っている名前の作家さんの作品を目にすると、ちょっと興味を持ってしまう。無名な作家(未満)としては、絶望的な話であるが。

裏表紙のあらすじ、というか宣伝文句を読んでみた。男子校の寮で、冬休みに居残った4人が事件や謎に巻き込まれ、秘密が明らかになる、らしい。驚きと謎に満ちた7日間を描く青春グラフティだとか。

それを読んだ時、ふっとスタンドバイミーを思い出した。それから、トムソーヤーの冒険

いずれにしても、男子のわちゃわちゃ感を感じた。男子校か。可愛い感じかな?

告白ゲームをきっかけに事件が、みたいな事も書いてあるぞ。面白そうだな。

そう思って、この本を選んだのである。

あらすじ

今、すごく簡単なあらすじは述べたが、もう少し書こうか。

田舎にある、超一流の進学校の、古ぼけた寮「松籟館(しょうらいかん)」は、冬休みを迎えてほとんどの生徒が帰省し、ほぼ空っぽになった。

そこに、3人の生徒が家庭の事情により、帰省せずに残る事になった。両親が海外にいる美国(よしくに)、両親は他界して、血のつながらない母と暮らしていた光浩、両親が離婚調停中の寛司。そこへ、ひょっこりやってきたのが、自宅通学の統(おさむ)だった。

クリスマスやら正月やら、彼らはパーティーをして、カードゲームをする。酒を飲みながら。

ゲームに負けた人が、何でも質問に答えるという事になり、一人ひとりの事情が明らかになっていく。

最近彼女と別れた美国や、ちょくちょく中年女と正門で会って手を握り合う様子を目撃されている光浩、そして幽霊から追いかけられているという統。告白をしていくと意外な事実が分かって来る。

不穏な空気

男子校のわちゃわちゃを想像していた私。のっけから裏切られる。なんとなく、不穏な雰囲気が漂っているのだ。

古い寮の建物、吹きすさぶ嵐。そういったものも不穏さを助長する。しかし、美国が幽霊を見たり、統が目を覚ました時にシーツで作った人形が吊ってあったりと、実際に物語はホラーチックになっていく。

え、これそういう話だったの?!と思ってももう遅い。謎が解けなければもっと怖いのだ。

しかし、高校生の会話は、やはりわちゃわちゃしていた。やんちゃ(酒たばこ)もするが元々頭の良い優秀な子たちなので、なんだかんだ相手を思いやる、思いやっているように見せる、そんな術を知っている。

統の懺悔はちょっと怖いし、美国の過去の話は意外だったし、光浩の身の上話は悲惨だ。そこへ寛司の両親がやってきて寛司の意外な素顔が暴かれるし。舞台はほぼ寮の中、登場人物はほぼ4人なのに、物語はジェットコースターのようにハイスピードに乱降下する。目が離せないのだ。

また、美国が見た幽霊は、幽霊の正体がどうのこうのというよりも、なぜ幽霊を見たのかという事が分かって来る。それがまた意外な事実。一番平凡のように描かれていた、主人公と言える美国だが、実は一番意外性のある人物に思えた。

芽生える友情

元々警戒し合っていた彼らだが、様々な告白や外部からの攻撃(?)により、友情というのか、連帯感というのか、そういったものが育まれていく。そこが救いだ。彼らの、友達を気遣う行動にほっこりする。

「次に会ったらどんな顔をすればいいのか」と思うような場面でも、結局はいつも通りに接している彼らを見ていると、なんだか気持ちが晴れて穏やかになってくる。男の子っていいな、友達っていいな、と思えてくるのだ。

最初に感じたホラー的要素は、最後には感じなくなっていた。多くの謎が解けたからだろうか。

でも、最後まで引きずっていた謎があった。一つは幽霊の正体で、もう一つはシーツの人形を誰が吊るしたのかということ。ああ、それから統が鍵のかかっていた寮にどうやって入って来たのかという事も。

それらの謎も、一番最後にはほぼ解けるのでご安心を。ただ、一つの謎だけはやっぱりハッキリしないのだよなあ。まあ、読者の想像にお任せという事なのかな。何となくこうかな、という想像はできるけれど。まあ、それでいいのかもしれない。

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