事実は小説より奇なり
とはよく言ったものだ。うちの長男の旅行の話をそのまま小説にしたら、
「そんな事あるかよー」
なんて、呆れられるかもしれない。
だが、実際にはあるのだ。ああ、うちの子どうしてこうなんだろう。
え?私の息子だから?ああ、そうねえ。あはははは。
友達の家へお泊まりからの合宿
20歳の長男。昔からよく忘れ物、無くし物の多い子。
一人で旅行する事は、このコロナ禍で何度かしている。今回は完全に一人なのではなく、一人で移動するが、友達と会う旅行だった。
新しく買った(私が選んだ)スーツケースを持って、朝早く出かけて行った長男。スーツケース、若干心配な母。もう使えないほど汚して来たらどうしよう・・・と。
全部で5日。けれども一日は夜行バスなので3泊5日みたいな旅。新しい服もたくさん詰めて、出かけた。
連絡を取るのは控えた。せっかくお友達と非日常を楽しんでいるのに、親の存在が見えたら興ざめだよね、と思って。
東京以外で始めて車を運転出来る、と言っていた。それもちょっと心配。景色が良い所を走るとかで、景色に見とれて事故らないかとか。
けれども、連絡がないのは良い印。次男が修学旅行の際には、早速二日目から連絡が入ったからな。
そして、5日目の夜、無事に帰ってきた。ああ、無事で良かったなと思った。が・・・
無くした物
開口一番
「財布無くした」
と。新宿までのバスの中か、新宿で盗まれたか、どちらかだと。
幸い大金は入っておらず、カード類で大事なのはクレジットカードくらい。それも、ほぼ限度額行ってるから、すぐに止める事もないだろうと。
貸し切りのバスだったから、バスの中に落ちていれば届くけれど、その後落したのだとしたら、もしくは盗まれたのだとしたら、出て来ない可能性が高い。
でも、とにかく夜遅いし、明日もバイトだしと言う事で、それは明日という事で・・・と思ったら、更に話が続く。
「イヤホンも途中で無くした。明日届くように注文した」
「途中の移動で列車内にスーツケースを忘れちゃってさ。終点まで取りに行って大変だったんだよ」
・・・て。目が点。
いやーでも、本人が無事に帰ってきて本当に良かったよ。それだけおっちょこちょいだったら、命がいくらあっても足りないように思えるが、案外身体は何事も無く帰ってくる。とにかく、
「楽しめた?」
と聞いたら、
「うん、楽しかったよ」
と言うので、良かった良かった。
スーツケースの事
イヤホンを無くすのは、常習犯。財布もまあ、腕時計とか傘とか、色々無くしたから分かる。
けれども、スーツケースの件は驚く。だって、スマホ以外何も持っていなかったという事なのだから。いや待てよ。財布はリュックから落ちたとか言ってたかな?リュックは背負っていたのだろうか。
まあ、そういう事にしておこう。リュックだけ持って新幹線、ではなく、特急を降りたそうなのだ。
友達の家に行った後、一人で夜行バスで移動し、特急に乗り換え、サークルのみんなが乗ったバスが来る駅で、合流するはずだったそうだ。そこから一緒にバスに乗って、山の上の合宿所に行くので。
ところが、スーツケースを列車内に置き忘れた事に気づいた長男。
「1時間気づかなかったんだぜ」
と、笑っている。次男は呆れていた。
で、どう連絡したのか分からんが、とにかく終点の駅まで取りに行き、無事自分のスーツケースを取り戻したそうだ。
しかし、そこから合宿所へ行くのが大変。なんと、2キロ程のスキーコースを逆走したそうだ。
逆走って事は、つまり上り坂。スーツケースを引きながら上り坂。
しかも、ブヨがたくさんいて、たかられるので急ぎ足。20~30分で着いたそうだ。
うう、笑っちゃ悪いが面白い。可愛い。眉根を寄せながら急ぎ足で坂を上る姿が目に浮かぶ。
でも、ボカロ曲のイントロクイズで優勝したり、なんか知らんが楽しかったようだ。サークル仲間は趣味の合う人達ばかりで、話していても楽しいようだ。良かった良かった。
経験値が上がる
忘れ物をしたり、落とし物をしたりするのは良くない。何事もなく、順調に旅が出来るのは理想だ。
だが、人生何が起こるか分からない。そして、色々経験している人は、何かあった時に強いと思う。取り乱す事なく、対処法を考えられる。
考えてみたら、3年前に家族旅行をした際にも、列車の中に折りたたみ傘を忘れて来てしまった長男。まだ旅の序盤だったので、この先傘がないと困るだろうと思ったが、自分でちゃんと駅へ戻って駅員さんに話して来て、何時に届けてくれるという話になり、その時間に取りに行って、無事傘を取り戻したのだ。
17歳。次男がそれを出来る気がしない。
今回も、スーツケースを忘れた事に1時間してから気づいて、恐らく駅へ行って駅員さんに話して、連絡してもらって、取りに行ったのだろう。
おっちょこちょいで困る子だが、対処する力が付いている。
とはいえ、イヤホンを何度も買い直したりするのは、損しているだけのような気もするが。もうこれだけ回数買っていると、勉強料だとは言えない。これは治らない気がする。本人が、無くして失敗したなーと強く思わなければ変わらない。
一日経って、写真を見せてくれたり、話をしたりしてくれた。うちでちゃんと聞いてくれるの、私しかいないしな。男同士って、あまり会話しないよなあ。仲は悪くなくて、時々話して盛り上がってる事もあるのだけれど。
可愛い子には旅をさせろと言うけれど、旅をさせたら話を聞きたいものだ。本当に、面白い子だ。けど、財布がちゃんと出てくればいいのだが。人づてにバス会社に問い合わせ中だとかで、まだ何とも。トホホ。