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ホラー?ミステリー?ファンタジー?でもやっぱり純文学!村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」

かつて、村上春樹「ノルウェーの森」の感想文を書いた。私は好きになれないと書いた。その時、読者の方がやはりノルウェーの森は好きではないが、いくつか好きな作品があると挙げてくださった村上作品の中に、この「ダンス・ダンス・ダンス」があった。

教えていただいてから、しばらく経ってしまったのだが、突然村上春樹を読んでみようと思い立った。書店で買おうと思ったのだが、どれを買おうか迷い、何だか頭の片隅にあって忘れられなかった「ダンス・ダンス・ダンス」が読んでみたくて仕方なくなった。書店にはなくて、結局Amazonで注文したのだ。書店で他の本を何冊か買い、レジで会計を済ませたらすぐにスマートフォンで注文したのだ。

そして、これを読んだ私は、ちょっとハルキストになりかけている。ノルウェーの森以来、好きではないと思っていた村上春樹作品。だが、やはり一つ読んだだけで判断するのは間違っていた。村上春樹作品は面白い。まあ、まだ二つ読んだだけだから、それも早とちりかもしれないが。

あらすじ

あらすじを書こうとして驚いた。上下巻の長編で、ずっと一人称で語られるところの主人公に、なんと名前がないのだ。「僕」としか言い様がない。いや、ここは「主人公」と書いておこうか。

主人公は34歳の男である。バツイチ。雑誌などの記事を書くライターだ。ドルフィン・ホテルという札幌のホテルの中に、不思議な部屋がある。そこに羊男がいる。羊男が主人公と世界とを結びつけている。

羊男にまつわる話はホラーのようであり、キーパーソンであるキキという女性を追いかけ、異世界のような所に迷い込む様はファンタジーか。だが、突然殺人事件が起こって、ミステリーの様になっていく。

14歳の少女ユキと出会う。ユキは両親にまともに育てられていない。主人公はユキとドライブをしたり、一緒に旅行に行ったりする。その旅行先で白骨を6体目撃する。とても変な場所で。

高校時代の同級生で映画俳優の五反田が出てくる。キキと五反田が一緒に映画に出てきたのをきっかけに、主人公は五反田と会うようになり、そのうちに殺人事件に関わってしまい、警察の取り調べを受ける。それでも、五反田に迷惑がかからないようにしらを切り通し、五反田とはその後も親しくつき合うようになる。

主人公に関わった人物が、一人、また一人と死んでいく。あの白骨が暗示していたのだ。あと誰が死ぬのか、そして殺人事件の真相は。先が気になって、どんどん読んでしまう。そして、意外な展開に。というか、終わり方がさすが純文学。ハッキリしない。ハッピーエンドでもバッドエンドでもないような。謎が全て解けてはいないような。

音楽に詳しい作者

小説の舞台は1970年代なのだろうか。80年代かな。それは初めから終わりまで、たくさん出てくる音楽で何となく分かるのだ。

しかし、私は「洋楽」に詳しくない。始め、いろいろとバンド名を上げて

「くだらない名前だ」

などと酷評しているから、架空のバンドなのかと思っていたら、そのうちABBAとかカーペンターズなど、私でも知っている名前が出てきて、どうやら実在しているバンドらしいと思う。やたらと歌手名が出てきて、それを知っていたら情景も浮かびやすいのだろうが、知らなくて残念だ。そのうちマイケルジャクソンが出てきて、やっぱりどれも実在する歌手なんだろうなと思ったり。

ノルウェーの森の時にも確か洋楽のレコードの話がたくさん出てきたような。主人公がレコード店でアルバイトをしていたのだ。この作品にもたくさん洋楽が出てきたので、作者は古い洋楽に詳しいようだ。現在の歌手ならともかく、私が生まれた頃の洋楽などには全く詳しくないので、返す返すも残念である。きっと、同じように洋楽に詳しい人は、もっとハマる小説なんだろうな、そういう人こそハルキストになるよな、と思ったりする。

性描写は

ノルウェーの森で好きではないと思ったのが、必要以上に詳しい性描写だった。一番よくないと思ったのは女性が語っているという設定で、女性が男性にそんな風に話す訳がないと思ったのだ。そして、そういう作品を一つくらい書いたって作者の自由なのだが、それこそを素晴らしいと褒めそやして賞を与えてしまうエロ本を知らない文学者達の感覚が更に嫌だったのだ。

しかし、ダンス・ダンス・ダンスでは、過剰な性描写はない。一部性描写はあったものの、過剰だとは思わないし、大人が出てきて恋愛を描くとしたら当然の成り行きだし、むしろ描写は美しい

というわけで、嫌う理由がなくなった。他の村上作品も絶対に読んでみないといけないな、と思った。

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最後に一言

というわけで、この小説はオススメである。村上春樹を知らない人にも、純文学にそれほど馴染みのない人にも、是非読んでもらいたい。ミステリー好きも、ファンタジー好きも、ホラー好きも、純文学好きも、みんな満足する作品になっている。読んで良かった。

ただ、最後に一言言いたい。

メイを殺したのは誰なんだ?