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【読書感想文】池井戸潤「民王~シベリアの陰謀」

本屋でこの本を見つけた時、

「民王?ああ、ドラマ化されてたやつだな?」

と思った。これが池井戸潤先生の作品だとは知らなかった。手に取って、裏表紙のあらすじを読んでみると、知らない内容だった。謎のウイルス?陰謀論?面白そうだ。読むしかない!

ということで、早速購入した。

私が買ったのは文庫本だが、この話は2021年9月に単行本として刊行されたそうだ。つまり、新型コロナウイルスの感染拡大中に書かれたものという事だ。コロナは2020年1月末から日本に広がり始めたから。

この話の主人公は内閣総理大臣その息子だ。なんだか面白そうだ。

ドラマ「民王」

「民王」はやはりドラマ化されていた。2015年に放映されたそうだ。私はドラマを観なかったのだが、総理大臣とその息子の中身が入れ替わるという非現実的なファンタジーで、まさかあれが池井戸潤先生の小説が原作だとは思っていなかった。

観ていなかったはずなのだが、チラリと見かけた事がある気がする。だが、中身が入れ替わるなんてありがちな設定だし、はっきり言って興味がなかった。

今回私が読んだ本は、この「民王」の続編だった。本文中に「かつてのテロ事件」という言葉が時々出てくるのだが、それが1作目の「民王」に出てくる事件らしい。だが、前作を読んでいなくても、この続編は充分楽しめる。

あらすじ

では、私なりにまとめたあらすじを。

未知のウイルスによる感染が発見される。人を狂暴化させるという「マドンナ・ウイルス」だ。ネーミングは官房長官が適当につけたもの。最初に感染が発見されたのが元女子プロレスラーの大臣で、彼女のあだ名がマドンナだったから。

未知のウイルスが流行し出した時、どんな事が起こるのかは、2024年の我々は知っている。緊急事態宣言を出す、出さない、医療経済のどちらを優先するかのせめぎ合い。外出自粛を守らない人々。そして、こんなのはでっち上げだと陰謀論を唱える人、信じる人。

総理大臣の武藤泰山は、対応に追われる。息子の翔はウイルス研究者の紗英先生と共にシベリアへ出かけ、ウイルスの出どころを探る。

一方、陰謀論者たちが大規模デモを起こし、それをあおる都知事。都知事の小中には再三笑わせられる。

ウイルスの謎が解けていき、もう1つのウイルスが存在することが分かってくるが、その正体が現れる事なく終盤へ。まさか続きは別の小説、とかじゃないだろうなといぶかしむ私。

そして、大規模デモの危機、泰山危うし。

しかし、まさかのそこへつながるー!?からの、思わず涙がホロリの感動的なスピーチ。最後の最後まで面白い、究極のエンターテイメントだった。

人物像

都知事の小中には笑わせられる。いや、笑いを飛び越えて呆れてしまうかな。ちょっとやりすぎだと思う。ただ、マスクの話には思わずクスリ。そうきたか。けっこう皮肉が効いている。

ずいぶん変な都知事だなと思ったら、この小中という人物は1作目の「民王」で、政治評論家として出てきた人物だそうだ。前作を読んでいたら、あいつが都知事になったのか!と面白いところだったのだろう。そういう意味では前作を読んでいた方が良かったかも。

翔は漢字が読めない、おバカという設定になっている。けれども、けっこうまっすぐでいいやつだ。最後の翔の選択を見て、もし続編があったらまた全然違った物語になるのだろうな、と思った。

泰山の秘書、貝原もいい味わいだ。翔の事を「翔ちゃん」と呼ぶが、まじめな雰囲気を漂わせている。それでいてはっきりものを言う

官房長官のカリヤンもいい。泰山とカリヤンは、どうあっても仲間、同志という感じなのがいい。実際に総理大臣と官房長官もそうだといいのにな、と思ってしまう。いや、ひょっとするとそうなのかもしれない。

コロナとは違って

コロナが一時「武漢ウイルス」などと呼ばれていたように、この本のマドンナ・ウイルスはシベリアなのか?つまりロシアなのか?と思ったが、コロナが世界中の問題になったのと違い、マドンナ・ウイルスは日本の中だけのお話だった。

まだコロナが終息したとは言えない時期に発表したお話で、なかなか皮肉が効いている。けれども、陰謀論に関してなど、強い批判ではなく、柔らかく論じている気がする。

泰山が悩み、なすすべもない状況は、実際に内閣が直面していた状況だろう。改めて、大変だったのだなとねぎらいの思いを抱いた。みんな大変だったし、医療従事者はすごく大変だったけれど、決断しなければならない政府もまた、大変だったろう。医療従事者にとっては、まだ終わってはいないコロナ禍なのだろうが。

いやしかし、陰謀論がそう来たか。ああ、ネタバレはすまい。最後まで面白いこの作品を、あなたも読んでみてはいかがか。読書感想文にももってこいだと思うぞ。(まだ続く↓)

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そして、最後の泰山の感動的なスピーチだが、スピーチが感動的というよりも、泰山の国民に対する姿勢とか、そういう所に感動したのかも。昨今の総理大臣になった人達も、私はこの泰山と同じように情熱があり、国民の事を一番に考えて職務に当たっている(いた)と思う。そのやり方が気に入るかどうかは別として。