この一週間、私にしては珍しく毎日出かける用事があった。しかし、その半分が病院という情けない事実。またしても・・・
薬指の異変
寒くなってくると、手指のトラブルはつきものだ。乾燥によるカサカサ、ひび割れ。とても痛い。ハンドクリームをこまめに塗っても、すぐにまた水を使ってしまうし、ハンドクリームもすぐ乾いてしまう。
その毎年あるトラブルとは別に、今回は洗剤かぶれからの、得体の知れない薬指の異変が起きていた。もう一ヶ月以上になるだろうか。爪の白い部分が生え際の方へどんどん増えていくのだ。
昔、子供の頃にもそんな事があって、白い部分は切らなくちゃ、と思って爪がどんどん小さくなって行った時期がある。親戚のおばさんから、
「ああ、これはもう治らないよ」
と言われて、母が憤慨していたのを覚えている。そして、少し大きくなって爪を伸ばすようになったら、自然と治ってきて、小さかった爪が普通になった。母は以前言われた事をずっと根に持っていて、
「もう治らないなんて言われたけど、ちゃんと治るじゃないねえ」
と、何度か言われたものだった。
で、今回また子供の頃と同じような感じになっているのだった。と言うことは、爪を伸ばしていけば治るのだと分かっている。しかし、爪がどんどん反れていくようで、あまり伸ばしてもおけない。今は炊事をするので、以前ほど順調には治っていかないようだ。
親指の異変
一方、別の手の親指に、ささくれのような物が出来た。そして、そのささくれなんて無くなってしまったのに、周辺が腫れて痛くなった。ちょっと触るだけでも痛い。
これもよくある事だった。そのうち治るのだ。ただ、一年ほど前、長男も同じような事になって、それが治らずにささくれ部分が緑色になってきて、怖くなって皮膚科へ行った事があった。その時の塗り薬が残っていた。
薬はフシジンレオ軟膏という、抗生物質製剤だ。これを塗ってみたが、良くならない。
例の薬指の方も、もしかしたらばい菌のせいかもしれないと思い、両方塗ってみたら、薬指の方は良くなった。ただ、荒れ気味だったので皮が薄く、ひび割れが時々起きていた。
ささくれが出来て腫れた親指は、一週間と少し前から痛くなっていた。何をしても痛い。特に食器洗いが痛い。我慢してやっていると、ちょっとイライラしてくる。だが、そのくらいで誰かに代わってもらうのも気が引けて、ずっと一週間以上我慢していた。
病院へ行け
あまりに治らないので、長男や夫から病院へ行けと言われ始めた。長男は同じもので先に行っている先輩なので、とくに言ってくる。
「針挿して中身出してもらいなよ。そうすれば早く治るよ」
と言う。長男が皮膚科へ行った時、いきなり針を刺され、ぎゅーっとやられてとても痛かったそうだ。そりゃ、触っただけでも痛いのに、そんな事をされれば痛いに決まっている。
私は痛いのが嫌な訳では無い。というか、今すごく痛いし、ずっと痛いから、一度痛い思いをするくらいどうって事は無い。だが、薬はあるんだし、いつも針挿さなくても治るし。医療費も時間も勿体ない。そうやってずるずると過ごしていたら、おとといあたり、やはりささくれだったところが緑色になってきた。しかも、それまでの痛みが少し和らぎ、違った痛みが始まった。触った時よりもその後にじわじわと、そしてちくちくと刺されているような痛みが。
日曜日にそんな風になったので、私は家族に宣言した。
「今夜薬塗って寝て、明日治っていなかったら皮膚科に行ってくる」
と。
薬も塗ったり塗らなかったりしたから、もう一度寝る前にちゃんと塗って寝れば、だいぶ良くなるのではないかという気がしていた。しかし、だがしかし・・・日曜日。酒を過ごした私は、薬を塗るのを忘れて寝てしまったのだった・・・無念。
月曜日の朝、目が覚めてすぐに思った。
「あー、薬忘れたー!」
と。指を見ると、更に緑色の部分が大きくなったようだ。それに、爪の横が赤く腫れている。前日までは全体的に腫れていたのが、部分的にぽこんと盛り上がって、赤く腫れていた。もう、行くしか無さそうだ。
読書の邪魔
午後の診療時間が2時半からだったので、2時半ぴったりに行く事にした。皮膚科はなんだかんだ混むし、待たされるイメージがある。だが、いつものように、ちょっと遅れるチョコナッツ。5~10分遅れてしまった。
5番の札を渡された。まだ1番の人が診察中だった。まあいい。そのために本を持って来たのだから。
しかし、集中出来ない。なぜって、ケツメイシが歌っているから!
退屈しのぎにはきっといいのだろう。だが、本を読もうとしている人には邪魔なラジオ。クラシック音楽だったら、もしくは洋楽だったら全然問題ないのだが、ケツメイシは日本語で訴えかけてくる。
しかも、ちょっと小難しい本を読んでいた。面白い所は誰がしゃべっていようと進むが、理解が難しい場所では歌でも邪魔に感じる。しかし、時間が勿体ない。頑張れ、チョコナッツ。
読んでいるのは「道草」だ。今、夏目漱石全集を読んでいるので。ラジオはいつしか道路交通情報になり、それから・・・小説が面白くなってきたので、もう聞いていなかった。ただ、患者さんと受付の人がしゃべると、こちらの集中もちょっとそがれる。それと、診察に呼ばれる人がいると、ちょこっと緊張する。針を刺すんだよな・・・と。
男女差?カルテが手書きかPCか
私の番が来た。実は、この皮膚科にかかるのは初めて。子供達を連れてきた事があるので、先生の事は知っている。この先生、とても可愛い。歳は若くないのだろうが、可愛くて優しい。大人しい感じで。そのくせ、すごい機械を使っている。
じゃーん。ここで一つ語りたい事がある。つい先日考えた事があるのだ。何しろ整形外科、産婦人科、歯科、眼科、皮膚科に通っている。子供に付き添って内科にも行った。ああ、今年は医療費がすごい事になった。でも、還付金がもらえる10万円にはほんの少し届かない模様。多分今年は9万円くらいになるだろう。一番損なパターンだ。
考えた事というのは、カルテのこと。カルテをパソコンで作っている先生と、手書きで作っている先生とがいるなあと思ったのだ。それが、内科、整形外科の先生はパソコンで、眼科、産婦人科の先生は手書きだった。歯科は分からない。内科は二つ行って両方ともパソコンだった。
この時、パソコンを使っているのは全員男の先生だった。病院が古くても関係ない。そして、手書きなのが女の先生だったのだ。産婦人科の先生は若いのに、やっぱり手書き。病院は新しいのに、字が汚いのに、手書き。
女性は機械に疎いとは決まっていない。だが、統計的にはそうだろう。特に、我々くらいの年代では。
で、そんな事を考えていたのだが、ここの皮膚科の先生、割と上の世代の女性だが、カルテはパソコン。しかも、パソコンの画面に手書きで何やら書き加えているではないか。更に、爪の写真を撮られたのだが、そのカメラがまた見たこともないようなもの。顕微鏡のような感じだろうか。私も、腫れた爪の写真を撮っておこうかと思ったが、スマホでは近すぎて全然ダメ。やはりこういうのは専用の機械があるようだ。
いやあ、可愛いのに、ITに強いのっていいなあ、なんて、そんな事言ったらセクハラだな。
自分の体なのに・・・
さてさて、診察を受け始めてすぐ、私の大間違いに気づいた。先に症状と場所を書いて出していた。人の図の指に丸をし、言葉でも、
「右手親指、左手薬指」
などと書いた。が、先生が私を診察しようとして戸惑った。
「右手、あ、左手ですか?」
あぁ!何をやっているのだ、私は。親指が腫れたのは「左手」で、薬指の爪がおかしいのは「右手」なのに。どうして逆を書いたのだろう。ショックだし、恥ずかしいし、申し訳ない。先生、手書きで矢印をささっとパソコン画面に書き込んでいた。ごめんなさい。
先生は優しかった。うちにあったフシジンレオを塗って、あと飲み薬も飲めば良くなるでしょうと。
「針を刺して中身を出せば、早く治る事は治りますけど」
遠慮がちに言うが、無理にとは言わない。長男が言っていたのとは違う感じ。でも、私はせっかく来たのだからと、
「早く治った方がいいので、やってください」
と言って、刺してもらうことにした。先生と、おばちゃん看護師さんが用意をしてくれた。針はミシン針みたいな形で、大きかった。けれども、皮を破くような感じだったので、全然痛くなかった。そしてぎゅーっと中身を出す。
うん、これは痛い。痛いけれど、想定内。ニキビをつぶすのと同じだから、割と慣れている痛みだ。私は顔色一つ変えずにいた。しかし、多分痛みのピークは過ぎていたと思う。
うわー、中から黄色い液体が出てきた。良かったよ、これで治りそう。ニキビも腫れていると痛いけれど、中身を出してしまえばすぐ良くなるし。
時代錯誤
というわけで、3時半に終わった。薬を塗ってテープを貼って、ネットをかけてくれた。なんか、治療してもらった感があって良い感じ。おばちゃん看護師さんが、それをしながら話してくれたのが、
「これをね、お夕飯の支度をするまで貼って置いてね。主婦は大変よねえ、誰もやってくれないし、やらなきゃご飯食べられないしねえ」
という物。うーん、ちょっと古いかな?先生も私も何とも言わずに「ふふふ」と笑う。確かに私は無理して夕飯の支度をするだろう。しかし、本当に出来なければやらなくても何とかなる。家族の誰かがやってくれる事もあるだろうし、それぞれ外で食べたり買ってきたりすれば済むことだ。主婦は何があっても家事を休めないというのは、時代錯誤的な発言だなと思った。そして、この看護師さんは、こうやって夕方まで働いているのに、家に帰ってちゃんと夕飯作るのかなと思うと、頭が下がる思いも。
お待ちかね、おっちょこちょい
さて、帰りに処方箋薬局やらスーパーやらに寄ってから帰って来た。スーパーと言っても、買ったのはほんの少しだが。どうしてもコーンフレークを買わなくてはならず。そのコーンフレークの入った布の大きい袋を玄関に置き、靴を脱いだ。
後ろ向きで脱いで玄関に上がった。その瞬間、
「ボリボリッ」
という音が。
「や、やべえ!」
独り言を言ってしまった。玄関に置いた袋の端っこ、つまりはコーンフレークの袋の角を、かかとでゴリっと踏んでしまったのだ。コーンフレークの一部が見事に砕けた音がしたのだった。
息子達がそれぞれ帰ってきた時、その話をしたら、長男は、
「問題ないよ」
と言い、次男は、
「最後のおまけが増えるだけだよ」
と言ってくれた。二人とも優しいなあ。母は感動したのだった。小さな感動というやつだ。
そうして、飲み薬を朝晩飲み、薬はなるべく頻繁に、水仕事が終わったら付けるようにした。しかし、意外にすぐには治らない。昨日よりは少し、良くなったかなと思うくらいだ。まあ、飲み薬も5日分だし、もう少し気長に様子を見よう。治ったら年末の掃除を徐々に始めようと思う。
薬指はなんと!
はっ、薬指の事を忘れていた。
皮膚科で、親指のうみを出してもらう前に、薬指の方もちゃんと見てもらった。先生、
「これは爪甲剥離(そうこうはくり)と言って・・・」
と、本を出して写真を見せてくれた。そこはアナログなのね。探すのにちょっと時間を要していたよ。
それで、なんと
「原因不明です」
おう、びっくり。ついでに何とかしてもらおうと思って言ってみたが、まさかの原因不明。
不明というか、色々な原因が考えられるという事らしい。ばい菌のせいだったり、外的要因だったり。私の場合、洗剤で荒れた事が引き金になっているから、外的要因かもしれないが、抗生剤で良くなったから、ばい菌かもしれない。それで、先生曰く、
「抗生剤は、塗ってダメな事はないので、どんどん塗っちゃってください」
だそうだ。どっちだか分からないなら塗ってしまえと。ただ、痒いのは治らないそうだ。洗剤かぶれなどは。
普通皮膚科だったら、ひび割れていたり、痒みがあると言ったりしているのだから、ステロイド剤を処方しそうなものだが、その薬指に関しては、
「様子見、という事でいいですかね?」
と言われた。私は、何かしら薬を出してもらいたいような気もしたが、まだずっと前に他の皮膚科で出されたステロイド剤が残っているし、まあいいかなと。実は両方の薬指が同じように白い部分が大きくなっているが、左の方はいつもこんな感じというレベルだ。爪のカーブが他の指よりもきつく、爪が離れやすい感じなのかと。どんどん白い部分が増えて行かなければ問題ないのだ。
モテる女はつらいよ
夜、夫に皮膚科に行った話をして、
「あの先生、歳だけど可愛いね。優しいし」
と言ったら、かつてその皮膚科に行ったことのある夫は驚いていた。
「え?可愛い?ただのおばちゃんだったよ。事務的にパッパッて感じだったし」
なんて言う。
「えー、可愛いよ。上目遣いでおめめパチパチって感じでさ」
と言うと、
「別人じゃない?」
と言う。でも、子供を何度か連れて行っても同じ先生だったし、おばちゃんだと言えば言えるし。
「あれじゃない、モテすぎるから、男の人相手の時には気をつけてるんじゃない?可愛く見えないように」
しかも、優しくも出来ないんだよね。男女ともに、モテる人は異性にはちょっと冷たくなる。大人になるとね。だから、私はいい男が苦手だったな。
そういえば、長男もこの間は一人で行って、有無を言わさず、いきなり針を刺されたと言っていたから、私とは大違い。やっぱり男だから、態度が硬くなったのか?そうか、男として見てもらえたのだな。
怒濤の一週間が終わったが、これからは師走。12月も面談などの子供の用事が二つほどあり、自分もまた眼科、産婦人科、歯科に行かなければならないし、下旬には旅行の計画もある。目や指は仕方ないとしても、体の中身は元気でいたいものだ。寒くなるし、何だか新型コロナの変異株も気になるが、頑張ろう。