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先にこっちを読まないと!ひどすぎる……タクミくんシリーズ「愛しきリインカーネーション」

私は憤っている

私は憤っている。純心なる読書時間を返して欲しい。なぜこんな事になっているのだ。

私は「愛しきリインカーネーション」を読み終わり、ひどく怒っている。なぜ怒っているのか、一言で説明するのは難しい。順を追って話して行こう。

Amazonからメールが来た。私は作家「ごとうしのぶ」先生をフォローしているし、ごとうしのぶ先生の「タクミくんシリーズ」をいつも買っているので、新刊が出ればお知らせのメールが来るのだ。

本当は文庫化してから買いたいところだが、それを待てないくらいに好きなシリーズで、単行本を早速買い求めた。そして、いそいそと読み始めた。

タクミくんシリーズとは、タクミとギイの恋愛物語だ。しかし、友達などたくさんの登場人物が登場し、主人公たち以外の恋愛模様や事件が描かれる事も多い。

今回は、ちゃんと帯にもある通り、ずっと昔に発売された「Sincerely…」に登場した「タケル」のお話がメインのようだ。

読み始めたものの、そのSincerelyに関して忘れている部分もあったので、書斎(と呼べるものでもないが)へ飛んでいき、Sincerelyを取り出して、ざっと読み返した。よしよし、思い出したぞと。

また読み進める。だが、どうも端々に出てくる「既に解決済みの事件」とかタケルの前の恋愛事情とか、なーんとなく、私が読んでいない物がありそうな感じがする。

他にタケルが出てきたお話はあっただろうか。最近の(タクミが大人になってからの)物語でチラッと出てきたのは覚えているが、それには事件とかタケルの恋愛は出て来なかったはずだ。

他に何かあったのか。何度も本の帯を見たのだが、何も書いていない。本の末尾なども見たが、Sincerelyの事しか書いていない。

そうか、事件のあらましは後でわかるようになっているのだろう。私はそう考え、とにかく読み進めた。

良かった。面白かった。だが、もうあと7分の1くらいしか残っていない状態になった時、私は結論を出した。後これだけでは、事件の内容が語られる事はないと。

検索をかけた。どうかけたのか詳細は忘れたが、この本の感想を書いた文章がヒットした。ネタバレありと書かれたその感想には、冒頭で

「速攻『闇にあかく点るのは』を読み返した」

と書いてあって、は!?となった。なんだそれ。Sincerelyではなく、闇に……なんだって?知らんぞ。

今度はそちらの「闇にあかく点るのは」を検索した。そうしたら、本がヒットした。嘘だろー、これ知らないよ。

確かにタクミくんシリーズではないが、ごとうしのぶ先生が書いた本だ。Amazonさん、お知らせくれなかったのかよ。いや待て。Amazonからのお勧めの品メールを全て読んでいるかと言うと……題名しか見ていないかもしれない。

いやいや、よしんばお知らせが来ず、気づかずに先に「愛しきリインカーネーション」を買ってしまったとしても、帯よ。帯に書いてあれば。

帯にはSincerelyの事しか書いていない。もし、私がSincerelyを読んでいなければ、この本を読む前にそれを買うだろう。だから、帯にSincerelyだけでなく、闇にあかく~の事も書いてあれば、私は読む前にそちらを買ったのに。

どうしてくれるんだよ。先に読むべきものを後から読む事になる。もう、読んでしまった。先が分かっていて読むわけ?というか、せっかく大事に大事に読んでいた愛しきリインカーネーションを、ずっと「おかしいな」「後で出てくるのかな」などと思いながら読んでいたなんて。ひどすぎる!

というわけで、速攻闇にあかく~を注文した。Amazonで。翌日配送で。ごめん、だってもう頭の中は先を行っていて、忘れる前に読まないといけないような、焦燥感に駆られてしまって。

だが、7分の1を残したところで……と思った。翌日まで待てないし、とにかく愛しきリインカーネーションは最後まで読んでしまった。やっぱり、こちらの事件も解決しないのだな。

闇にあかく点るのは、鬼の灯りか君の瞳。

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どうして憤っていたのか、お分かりいただけただろうか。

だが、翌日の昼頃にはもう闇にあかく~が届いた。薄い文庫本だ。早速読んだ。

うぉー、まさに不思議だった事が書いてある!これを先に読むべきだったのにー!

と、怒りはここまでにして、ざっとあらすじを。

言ってみれば「タケル バース」かな。いや、厳密には誕生した瞬間は描かれていない。タクミくんシリーズで登場するよりもずっと前の話だ。多分。

秋彦という病弱な少年がいて、近所に住む武(たける)にいじめられていた。曼殊沙華の花が好きな秋彦。曼殊沙華は不吉な花だから飾ってはいけないと言われつつ、秋彦は曼殊沙華を摘む。武が、曼殊沙華の花を摘むと人が死ぬと言った。そして、その翌日武は姿を消した。

数年後、近くの山で少年が見つかった。彼には記憶がなかった。行方不明の武だと思われた。秋彦は武に惹かれるが……これ以上はネタバレになってしまうので割愛するが、秋彦とタケルは愛し合うようになる。

だが、秋彦は若くして亡くなった。

秋彦は生まれ変わった。雨月として。やはり雨月は心臓が弱く、長く生きられないと言われている。タケルと関わると、命が縮むのだ。だから、タケルはもう雨月とは関わらず、見守るだけにしようと決めていた。

タケルはブンさんという警察官と共に、事件解決の手伝いをしていた。それから、ブンさんの甥の弟として暮らしていた。

雨月が通う高校の周辺で事故が多発する。不可解な事故が。相変わらずごとうしのぶ先生は、事件を描くのが上手い。実はミステリーがお得意と見た。

事件は解決する。だが、雨月とタケルの関係は……関係すると予感させるのだが、始まっていない。

そして、ちらりとギイが登場する。ギイが最後にも出てきて、タケルと話をする。そして……愛しきリインカーネーションの冒頭とダブりながら繋がっていた!

愛しきリインカーネーション

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まるっきり続きだ。闇にあかく~に繋がっているのが愛しきリインカーネーションだ。間違いない。それなのに、どうして……まあ、憤りは置いておいて。

愛しきリインカーネーションの方は、最初の説明はさておき、場面としては闇にあかく~の最後のシーンから始まる。そして、タケルは雨月と同じ高校に通う事になる。

こちらの主題というか、メインの事件はこうだ。タケルたちが通う桐嶺学園高校の新任音楽教師が失踪する。その教師の母校がタクミが働いている音大だった。学園から、次の教師が見つかるまでの臨時教師を用意して欲しいと言われた音大。そこでタクミに白羽の矢が立つ。

タクミがギイに相談すると、ギイは気になる事があると言ってあちこち調べ回る。読者としては何が気になっているのかはイマイチ分からない。教師いじめがあったのかな、とか?いや、タケルのいる、以前事件が起こった学園だからか?とか。(まあ、最初は前の事件が分かっていなかったから、ますます分からなかったわけだが)

タケルと雨月の話と、タクミやギイの話と、場面はコロコロと移動する。そして、それらがいつか一つに。で、やっぱり失踪事件は未解決のまま、このお話は終わるのであった。きっと続きがある。早く読みたい。

一番好きな場面は、タケルと雨月の「始まり」のシーン。

「ほんの少しだけ右腕に力を込めると、引き寄せてもいないのに、雨月がすとんと、タケルの胸に落ちてきた。」

ここが好き。この前後も好き。なんだか、リアリティがある。離れたくなくて身動きが取れなくなっていた二人が、ほんのちょっとの変化で、とうとう抱き合うというシーン。いやー、胸キュンだね。

ギイとタクミのちょっとした会話もいい。タクミの方から「大好きだよ」と照れた声で小さく言う所とか。

分かりにくい三人称

ただ、時々分かりにくい所がある。全体に三人称で書かれているのだが、ちょくちょくカギカッコではない地の文に、話し言葉が出てくる。心の声ってやつだ。その主体が誰なのかがわかりにくい。これは誰の気持ちでしょう、と国語のテストに出てきそうだが、本当の正解は作者にしか分からない。小説としてはそれでいいものなのか、どうなのか。

確かに池上彰さんも言っていたが、「~と思った」という言葉を多用すると幼稚な文章になってしまう。だからって、登場人物が複数いるところでは「誰が」思ったのか、というのを明確にしないと読者には判別できない。読み取る力が足りないって?よしんばそうだとしても、私が読み取れない文章を、どれだけの人が読み取れるのか。おっと高飛車発言?。いやいや、そうではない。曲がりなりにも一般人(国語の研究者ではない)の、ボーイズラブを読む、ライトノベルを読む人が、一体どれだけ読み取れるのか。

とは思うものの、全体としては面白く、文章も素敵であった。

それから、前作を読んでいなくても分かるように、色々と説明してくれていた。この本を読むにあたって、闇にあかく~を読んでいなかったとしても、本来は困る事はないのかもしれない。ただ、ちょっと「前の事件」なるものが気になるだけで。

つまり、ごとうしのぶ先生が悪いわけではない。帯に闇にあかく~の事が書いていないのがいけないのだ。最初、出版社が違うとか?と思ったが、両方とも角川だったのだから、そんな事はない。たまにあるのだ。世界観としてはタクミくんシリーズの中なのに、別の出版社から出たごとうしのぶ先生の小説が。でも、これらは違う。ちゃんと角川さんでやっている。

文句タラタラで申し訳ない。何しろ、もうどっちが先だか分からない感じになって、頭の中ぐちゃぐちゃになってしまったものだから。とにかく、続きを早く読みたいのである。楽しみにしているので、どうかよろしく。

最後に一言。「愛しきリインカーネーション」を読む前に、必ず「闇にあかく点るのは、鬼の灯りか君の瞳。」を読むべし!

それから「リインカーネーション」とは、生まれ変わり転生という意味のようだ。(私調べ)