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中身はサスペンス。天才バイオリニストの話~ごとうしのぶ「エリカの咲く庭」を読んで~

2022年4月26日(火)

概要

角川書店
崎義一の優雅なる生活シリーズ
「エリカの咲く庭」

作者「ごとうしのぶ」

ルビー文庫「タクミくんシリーズ」の10年後を描く「崎義一の優雅なる生活」シリーズの2作目

1作目の「BLUE ROSE」については、私がライトノベル作家になろうと思った理由~ごとうしのぶ「BLUE ROSE」を読んで~ – たかんなお年頃 (takan.site)を参照されたし。

あらすじ

前作(BLUE ROSE)で、託生とギイが一緒に暮らし始めるという所までが描かれた。その続編なのだが、託生が引っ越し作業中に、あるCDを探す場面から始まる。そのCDとは、託生の師匠であり、ギイの幼なじみの天才バイオリニスト「井上佐智」の10年以上前に発売されたもの。そのCDをギイの部屋から見つけたのだが、なんと未開封のまま。なぜこのCDだけ未開封なのか、今開けて聴いてもいいか、を託生がギイに電話して聞こうとする。

そして、お話は14年前に遡る。15歳の井上佐智が、レコーディングを行っていた。佐智は2年前、山田聖矢という麻薬取締官(麻薬Gメン)と出会い、恋をした。二人は両想いを確認したのだが、それきり2年間連絡が取れずにいた。

佐智の家に、外国人からプレゼントが届いた。厳重に包まれたそれは、ブレスレットだった。母はイミテーションだと決めつけたが、佐智はそれが本物だと気づいた。心当たりがあったのだ。それをある場所に隠して、後で銀行の金庫にでも預けようと思っていたのだが、翌日なんと狙撃されて軽い怪我を負う。

狙撃は威嚇射撃だと思われた。警察と、そしてなんとその場に現れた聖矢に助けられた佐智。狙われた心当たりを聞かれても、何も分からない。ましてや麻薬がらみの心当たりなどは全くなかった。

佐智の身辺は狙われて、ホールでは爆弾騒動があり、いよいよ切羽詰まった状況になる。それと同時に、佐智は聖矢に会えたにも関わらず、聖矢が「会うまで思い出しもしなかった」と同僚に言った言葉を聞いてしまう。もう諦めようと思ったのに、今度は聖矢がプレゼントを持ってくる。

聖矢に振り回される佐智。そして、事件の方も謎を深める。佐智がレコーディングしようとしている曲の作曲者アリオーナの死の謎。ブレスレットはそのアリオーナの持ち物だった。彼には日本人の恋人がいて、その恋人も壮絶な死を遂げていたが、もしかしたら生きている・・・?ギイもアメリカで、謎を解く一端を担う。

最後には事件も解決し、佐智と聖矢の関係もまた、一歩進んだ。そんな、佐智と聖矢の物語だ。

そして、また最後に現代に戻る。って、最初の話ってなんだったっけ?と見返してしまう程、中身が濃い。最後に託生とギイの会話が出てきて、なぜギイが1枚のCDだけ開封していないのかが分かる・・・ような分からないような、なのであった。

佐智と聖矢のなれそめ

エリカの咲く庭の中には、佐智と聖矢が出逢った、2年前の事件の事がたびたび登場する。ちらっとなのだが。私はかつて読んだし、印象に残っているから大丈夫だったのだが、何せ読んだのは何年も前の事。エリカの咲く庭を読み終わってから、やっぱり気になってそれを本棚から引っ張り出してきた。

それは、「通り過ぎた季節」だ。タクミくんシリーズの中に入っているが、託生は出てこない。文庫本一冊丸々佐智が13歳のお話なのだ。

この感想文を書く前に、さらっと読んでおくか、と思って読み始めたら、さらっとでは気が済まず、ちゃんと読んでしまった。感想文を書くのが一日遅れた。しかーし、これはやっぱり面白い。聖矢が麻薬Gメンという事で、佐智の恋の話は、いつも警察が出てくる事になる。そうすると、刑事物、サスペンスになってしまうのだ。

サスペンス物として十分な読み物

この前、ごとうしのぶ先生は、三人称が苦手だと書いたような気がする。託生の一人称で書く方が向いていると思っていたが、この井上佐智の話になると、全然そんな事はない。三人称で、バッチリ。グッジョブ。

いや、そんな上から目線はおこがましい限りであるが。一読者として思うに、佐智シリーズはサスペンス物として十分通用するくらいの作品だ。BLが前提ではあるが、恋愛シーンはあまり出てこない。それよりも、事件の謎だ。ああ、なぜこんな風にサスペンスが書けるのか。憧れる。

それにしても、どうせ両方読むなら、先に「通り過ぎた季節」を読んでから「エリカの咲く庭」を読むべきであった。もし、通り過ぎた~を読んだことがないのであれば、これだけは先に読んで、それからエリカの方を読んでいただきたい。

あとなんか、調べたら今はルビー文庫挿絵入りでも「崎義一の優雅なる生活」シリーズが売ってるらしい。私は我慢出来ず、文庫本が出る前に単行本を買ってしまうのだが。

以上、感想文である。次は読み飛ばしていた「忘れ得ぬ此の花を、此の想いを」を読むぞ!そしてまた、感想分を書くのでよろしく。

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