知能指数は「IQ]と言われる。それに対しての「EQ」とは、心の知能指数の事だそうだ。
この本を手に取った時、勉強ばっかりできても仕事ができない人がいるが、勉強はそこそこでも、仕事のできる人がいて、そういう人はEQが高いよ、という話なのかと思った。そして、どうやったらEQを高められるのかが書いてあるのかと。
だが、そんな単純ではなかった。これは、全人類が読んだ方がいい本だった。
情動
初めに、感情はどのように生まれるのか、脳の働きから説明している。
ちょっと図もあったが、話が出るたびに図が欲しいと思った。
医学的な話は難しい。特に日本語が難しいのかもしれない。
前頭前野とか、大脳辺縁系だとか、大脳新皮質だとか・・・。だんだんチンプンカンプンに。
作者も、図を理解してほしいわけではないのだろう。わからなくていいのだろう。けれども、ぼんやりとしたまま読み進めるのは辛い。生物に詳しい人、医療系の職種の人には、きっと読みやすいのだろうな。
衝動が起きたり、共感したり、人間は生まれてすぐからそういう事を母親などからどんどん学んでいくそうだ。脳のどこかに欠陥が生じると、共感できなかったり、自分の感情が理解できなかったりするらしい。そのくらいは私にもわかった。
情動のコントロール
IQが高くても、情動をコントロールできなければ、社会的に立派な人にはなれない。つまりは、TPOによって欲求を我慢したり、怒りを鎮めたり、悲しみから立ち直ったりする力だ。
カッとなったからと言って、すぐに殴ったり、銃を乱射したりしたら大変だ。いくら計算が得意でも、記憶力が良くても、そういう人は犯罪者になって刑務所行きだ。
また、ちょっと怒られたからと言ってずっとふさぎ込み、何も手につかない状態が続けば、やはり頭が良くても社会の役に立つような仕事ができない。
わかりやすく言うとそういう事だ。
医療
医療と心の関係のところは、特に興味深い。
よく、病は気からと言うが、まさにそれだ。簡単に言うと楽観と悲観だ。楽観的に考える人の方が、病気の再発が抑えられたり、完治するまでの期間が短かったりするらしい。
印象深かったのは、医療従事者の間でも、その事を重要視する人と、それほど大きな問題ではないと思う人とに分かれているという事だった。
実際、子供を診てもらったお医者さんでも、この先生は重要視していたな、あの先生はしていなかったな、と選別できた。
私は、重要視してくれた方がいいと思う。少なくとも、先生や看護師さんが親身になってくれた方が、同じ症状だとしてもだいぶ気分がマシになる。冷たく、尊厳を傷つけられるような処置をされたら、もう生きていても意味がないように思えるかもしれない。
結婚生活
前後してしまった。医療の話よりこっちの方が先に書いてあった。
夫婦喧嘩の事がけっこうページを割いて書いてある。
夫婦は喧嘩をするものという前提なのがおかしい。うちはしないけどな。
それはそうと、こういう夫婦は離婚率が高く、こういう夫婦は低い、という具体例が面白かった。確かにそうだ。
知っていると、自分が離婚されないというメリットもあるが、身近な人の相談にも乗れると思う。ためになる本だ。改めて。
情動教育
作者が一番言いたいのはこれだと思う。
情動教育、すなわち、感情などのコントロール力を養うという事だが、それがとても大事だという事だ。
生まれてすぐから、18歳ごろまで、段階を経て人間は情動のコントロールなどを身に着けていく。
それがうまくいかないと、すぐ暴力をふるったり、怒鳴ったりする人になる。または、ギャンブルで身を亡ぼしたり、仕事が長続きしなかったり、うつ病になったりしてしまう。
特に重要なのが、学校教育だ。アメリカで、情動教育プログラムを実践している学校の例が書いてあった。
確かに素晴らしい。だが、なかなか普及していない。先生が忙しすぎるとか、医療現場同様、それほど重要視しない人が多いからかもしれない。
だが、小学校には道徳の授業がある。今はどうなっているのだろうか。昔は道徳の授業も、国語で物語などを読む授業と、ほとんど同じだと思っていた。
そういうのは国語に任せ、道徳ではもっと実践的に、紛争を解決したり、悲しみなどの心情を語らせたり、そういうプログラムにしてはどうだろうか。
そういえば、道徳にも成績がつくようになったんだっけ。今の道徳はどうなっているのだろうか。
しかるべき人たちが、この本を参考にして、道徳教育を変えてほしいものだ。
そうすれば、世の犯罪者が減り、心の病気の人が減り、生産性も上がる。
今の世の中では、親次第でEQの高さが変わる状況だ。つまり、情動教育はしつけなのだ。本書では、昔の言葉で言えば「人格」だと書いてある。人格が備わっている人は、人格が備わっている親に育てられるしかないという状況だと、それこそ「親ガチャ」状況ではないか。
どんな境遇に生まれたとしても、学校や地域で等しく情動教育を受けられればいい。そんな世界になったらいいと思わせてくれる、本書である。
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