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「あなた誰よ?」の恐怖

今日、ちょっとしたキッカケで数年前の事件を思い出した。

あれは携帯電話をスマホに替えて間もない頃の事。家に独りでいる時に電話がかかってきた。

画面を見ると「T田K子」と書いてある(偽名)。T田さんって誰だっけ?覚えていなかったけれど、私の電話帳に登録してある人な訳だ。

「はい、もしもし。」
出てみると、女性の声で、
「どちら様ですか?」
と。かなりつっけんどんな言い方。え?どちら様って・・・そっちからかけておいて、その台詞かよ?
「えーと、T田さん・・・ですよね?」
「どうして私の名前知ってるんですか?」
「今、そう表示されていたので・・・。」
「昨日、無言電話かけましたよね。何か用ですか?」
T田さん、かなり怒った様子でそう切り出した。
「え?いえ、かけていませんが。」
「かけましたよ!かなり長い間!」

私は昨日の自分の行動を頭に浮かべた。昨日は電車に乗って出かけたのだ。その時に、スマホの操作をして、画面を消さずに鞄に入れた。もしかしたら、その時に間違えてかけてしまったのだろうか。

「あの、かけたつもりはないのですが、もしかしたら間違えてかかってしまったのかもしれません。すみませんでした。」
「どうして、私の電話番号を知ってるんですか?」
T田さんはまだ怒っている様子。だが、私もなぜ彼女の番号を登録してあるのか、分からない。
「あなた、誰なんですか?」
まだ怒った様子で聞かれたので、ここは相手の名前を知ってるのだからと思い、名乗った。すると、
「どこにお住まいなんですか?」
と、聞かれた。迷ったが、
「X区ですけど。」
と答えると、
「M町ですか?」
「はい、そうです。」
「もしかして、MS小学校ですか?」
T田さん、ちょっとトーンダウンしてきた。
「え?はい、息子がMS小に通ってますけど。」
私がそう答えると、
「私、今は○○県に住んでるんですけど、前にM町に住んでたんです。子供がMS小だったので。」
と。お互い、子供が何年生かを言い合うと、年は違っていた。お互い名前も覚えていない。
「でも、名前が出たって事は、私の番号が登録されてたって事ですよね?」
T田さんはそう言い、お互いの共通点を探り合った。そこで、ふと思い当たる節があった。

「あの、5年前にPTAの○○部にいませんでしたか?」
私がそう聞くと、
「ああ、いました。」
とT田さん。
「ああ、それです。私、○○部の副部長だったので、部員さん全員の電話番号を教えてもらって、登録したんです。」

そう、部員さんへの連絡のため、電話番号とメールアドレスを集めて、登録していたのだ。その部は年に数回集まるだけの部で、部員さんの名前も覚えていなかった。私は登録したまま、何年も経っているのに削除していなかったのだ。

「そうでしたか、その節はお世話になりました。」
怒りモードからすっかりトーンダウンしたT田さん。しかし、間違えて無言電話をかけてしまったという事実は事実。怒ってかけてきた手前、笑顔モードにはならず。

「あの、間違い電話、すみませんでした。多分、鞄にしまうときに誤操作してしまったのだと思います。」
私がそう言うと、
「私の番号は、削除しちゃってください。」
と、言われた。
「はい、そうします。」
お互いさようならと言って、電話を切った。

電話で怒られたという経験なのだが、最後はこれですっかりお別れなのが寂しい気持ちになった。

私が副部長をしていた時、任期が終わったとしても、後で去年の人に連絡を取らなければならないこともあるかもしれないと思い、すぐには削除しなかった部員さんたちの連絡先。だが、さすがに顔も覚えていないような人の連絡先は、いつまでも登録しておくべきだはないと痛感したのだった。

それでも、昔親しかった人の連絡先が消せない。異性だったりすると、今更電話やメールをわざわざする事はないだろうと思うのだが、それでもなんだか消せない。時々、LINEの友達に勝手に入っていたりするが、もちろんそういう人にLINEする事もない。だが、ブロックしたりするのもなんだか寂しくて、そのままになっている。

だから、登録してある事が問題というよりも、誤操作が問題なのである。

この事件以来、私はスマホの画面を必ず消してから鞄に入れるようになったのだった。