これは絵本である。字が少なくて、すごくシンプルだ。だが、最後まで読むとドキッとさせられる。素晴らしい絵本だ。
テレビの手話講座「NHKみんなの手話」を観ていたら、この本が手話で紹介されていた。
見開きのページに、左側に「へいわの~」右側に「せんそうの~」と書いてあり、イラストが描かれている。
例えば平和の家族・戦争の家族、平和の道具・戦争の道具、更には平和の街・戦争の街、平和の海・戦争の海など。
平和の~では笑っている人物や楽しい物が描いてあり、戦争の~では乱れた部屋や鉄砲、そして人々が倒れている絵が描いてある。
後半、「みかたの顔」という文字と独りの人物の絵が見開きのページいっぱいに出てきた。人物は胸より上の絵で、表情は普通。というか無表情。そして次のページには「てきの顔」が出てくる。こちら、前髪の分け方がちょっと違うだけで、顔はほとんど一緒。同じように無表情。
そして、同じように敵の~味方の~が続く。「朝」そして「赤ちゃん」。朝も赤ちゃんも、同じ。味方の赤ちゃんも、敵の赤ちゃんも全く同じだ。
ぐっと来た。平和と戦争は全然違う。だが、敵と味方の何が違う?敵は鬼でも悪魔でもない。味方の国にも敵の国にも、同じ人間が暮らしていて、同じ朝が来る。敵国にだって赤ちゃんがいて、その赤ちゃんは味方も敵も何も違わない。
文字がほとんどなく、3歳児くらいに読んであげるものだろう。だが、これを読んで心が揺さぶられない大人は、もう少し考えた方がいい。味方と敵に違いはない、それをこの本は言いたいのだという事を。
私に孫が出来たら、速攻買ってあげようと思った。だが、孫が出来る予定はない(笑)
こんな素晴らしい絵本があったのか!と驚いていたら、なんと作者は詩人、作詞家として有名な谷川俊太郎先生だった。2019年に書かれたものらしい。なるほど……。
できれば世界中の子どもたちに、いや大人たちにも読んでもらいたい一冊である。
へいわとせんそう たにかわしゅんたろう (著), Noritake (イラスト)→https://amzn.to/424biZR