この物語は「大学病院の眼科へ – たかんなお年頃」の続きである。
右目がメガネを掛けても見えにくく、何か重大な病気では?と心配になって大学病院へ行ってみた。それが1月29日である。しかし、原因が分からず。もう少し検査をしてみましょうと言われ、3月3日に視野検査と診察の予約を入れたのであった。因みに、私は既に緑内障の治療中である。
1つの謎が解けた
1月に行った帰り、瞳孔を開く目薬のせいで眩しく、視力も落ちていたのだが、なぜか右目の方が左目よりもよく見えて、それが不思議だった。
いつも点している緑内障の目薬が無くなりそうなので、2月にかかりつけの眼科へ行った。その時、その瞳孔を開く目薬の不思議な話を先生にした。先生は考えてくれて、答え(というか可能性の1つ)を教えてくれた。
瞳孔を開く目薬は、目によって効き方が色々だそうだ。あの日、左目には良く効いたが、右目にはあまり効かなかったのではないか。そう、先生は言った。なるほど。つまり、大した問題ではなかったか。ましてやヒントでもなかったか。
大学病院へ
3月3日月曜日。前日は東京マラソンの日で、ボランティアでコース管理をやった。長い事立ちっぱなしだったし、暑かったし、打ち上げで飲み放題だったし、それなりに疲れて帰って来たのだが、月曜日の朝は早い。
しかも、夜中から雨が降り出し、前日とは一変して寒い日になった。雨の中、少し長く歩いて行く事になる。
9時半に視野検査、10時半に診察の予約が入っていた。予約をしているから、それほど待たずにできるだろう。11時には終わって、帰ってくると11時半か。と計算して、洗濯は部屋干しモードの風乾燥3時間コースを掛けて出かける事にした。3時間の風乾燥は初めて使う。洗濯の時間は全部で4時間で、12時半ごろに終わるようだ。
冬モードの服装で、傘を差して家を出た。道中、雨は大したことなかったが、風が強くてコートが濡れた。まだそれほど冷えていないのか、たくさん歩くと暑くなってきて、雨の中必死に手袋を外したのだった。
大学病院に着いたのは、9:15だった。15分も前に着くとは意外だった。うちから大学病院は、思っていたよりも近いらしい。再来受付の機械に診察券を入れ、出てきた紙を持って眼科の受付へ。
「受付はできていますから、この近くでお待ちください」
と言われた。それならなぜ紙に、眼科の受付へ行けと書いてあるのか分からない。眼科の前で待てと書いておけばいいものを。
予約したのに
持ってきた新聞を読みながら待っていた。すぐ呼ばれると思っていたが、なかなか呼ばれない。私の受付番号よりも後の番号まで呼ばれている。それでも、混んでいるのだろうと思って大人しく待っていた。
しかし、10時になって流石におかしいと思い始めた。予約をしているのにこんなに待たされるなんて。ちょうどその時、受付で何やら話し込んでいる患者さんがいて、その患者さんの話が終わってから聞いてみようと思った。
患者さんの用事は長くかかっていて、先にトイレに行ってきた。そして、戻ってきたら10:10。受付に患者さんはいなくなっていたので、行ってみた。
「視野検査の予約をしているのですが、もう40分経つのに呼ばれないんですけど、待っていればいいですか?」
この言葉も、どう言ったら非難がましく聞こえないか考えた末に導き出したものだ。どう?待っていればいいのか、という辺りが非難めいてないでしょ?
すると受付の人は、
「検査に呼ばれないですか?ちょっと聞いてきますね」
と言って、中へと入って行った。戻ってくると、
「次の回で呼ばれます」
と言った。多分忘れられてたな。もっと早く言えば良かったか。次で呼ばれるのならと、新聞もスマホも見ずに待っていた。検査前にあまり近くを見ていると良くないからね。
思ったよりもなかなか呼ばれず、10分くらいしてから呼ばれた。早速視野検査なのかと思ったら、まずは視力検査からだった。またこれか。
検査&検査
視力検査の椅子に座らされたまま、また少し待たされた。ようやく視力検査が始まると、けっこう詳しい検査をされた。普通のCの開いている所を答えるものでも、レンズを合わせて「あるのと無いのと、どちらがはっきり見えるか」などと時間をかけて調べた。それから、格子状の紙を見せられ、歪んだり欠けたりしている所はありますか、とか。
欠けている所はあった。真ん中の点を見つめると、上部に何カ所かもやもやした場所がある。右目も左目も。下半分にはそういう箇所はないので、あれはおかしい。これが緑内障の症状なのか。
また、1本の棒を片目で見て、曲がったり歪んだりしていないかと聞かれた。それは大丈夫だった。
視力検査は終わり、風が当たる眼圧検査をして、廊下の椅子で待たされた。
この時、傘を入れていたビニールの先が破れたみたいで、水たまりを作ってしまった。この辺りは建物の奥の方で、雨の日とはいえ全然床は濡れていない。それなのに、水たまりを作ってしまうなんて。どうしたらいいのか分からず、結局そのままに。誰か滑らないといいが。
視野検査に呼ばれた。半年に一度やっているから慣れているのだが、機械が違うと少し勝手が違う。右目の検査の時、だいぶ見えなかった気がする。
知らない人がいるかもしれないので説明すると、丸い所に顔を突っ込み、片目で真ん中のランプを見つめる。真ん中だけを見つめた状態をキープし、その状態で視界のどこかに光が見えたらボタンを押すのだ。光は定期的にパッパッとあちこちから光るが、光っているはずだが、何も見えない時がけっこうある。光の強さが色々で、強い光ならば見えるが、弱い光だと見えたのか気のせいなのか分かりにくいものだ。そして、じーっと一点を見つめていると視界がわーっと白くなったりぼやーっとしたり、とにかく目が疲れてしまうのだ。目が痙攣して視点がブレブレっとなってしまう事もある。
両目の検査を終え、右目だけ瞳孔を開く目薬を点された。それからまた少し待たされ、右目の眼底写真を撮られた。
忙しすぎる先生
そしてまた、廊下で待たされた。今度は新聞を読みながら待った。私の担当の先生が廊下に出てきた。ここには車いすで待つ患者さんがけっこういる。ある年老いた男性が車いすに乗っていたが、
「苦しいですか?」
などと看護師さんに聞かれていた。そして私の担当の若い男性の先生が、確か……どう苦しいのか、症状をはっきり言ってください、だったかな。なんかちょっと難しい事を言っていてびっくりした。女性の看護師さんがその後、
「どこが苦しいですか?顔上げてくださーい、そう」
なんて言っているのが聞こえた。そしてすぐ、私は診察室に呼ばれた。
大学病院はさ、検査する時、名前を呼ばれて行ったのに、
「名前と生年月日を言ってください」
と言われるのだけれど、診察の時は放送で何番の人はどこの診察室にお入りくださいと言うだけで、患者は入って行くとただ座る。私は一応名乗ってよろしくお願いしますと言ったけど、何も言わずに座る人もいると思う。なんか、おかしいような。
先生は、
「やはり緑内障以外の病気は見つかりませんね」
と言った。と思ったら、看護師さんがいきなり入ってきて、切羽詰まった様子でさっきの患者さんがどうのこうのと言う。そして、先生はすぐに立って行ってしまった。さっきの車いすの男性の所だと思う。私は荷物とコートと傘とを変な風に持っていたので、一度落ち着いて傘をその辺に掛け、コートをちゃんと畳んで膝に乗せ、カバンを乗せ、傘を手に持った。ふう。
先生が戻って来た。すみませんね、と言いながら。そして、私の目を見たりして、眼圧を測ったりした。また16だと呟いていた。この機械で測るとそんな感じなのか。
右目の緑内障はだいぶ進んでいるらしい。画面に映された視野検査の結果は、真ん中辺りが左から右まで真っ黒。そんなに見えていなかったか。
「真ん中が欠けているので、そのせいで見えにくいのだと思います」
と先生は言う。確かにそうかもしれないが、それでも二重三重に見えるのは、それとは違うのではないかな。やっぱり乱視が矯正されていないのだと思うのだが。
と、看護師さんがまたいきなり入ってきて、何か紙を見せる。
「あ、これ剝離じゃない。緊急って書いてあるじゃん」
と、先生は言い、何か看護師さんに指示を出していた。そして、私に向き直り、
「はあ……」
と、大きなため息。まあ、分かるけど。私は聞く。
「緑内障の手術はした方がいいですか?」
すると先生は、
「手術よりも、目薬を強化した方がいいですね」
と言った。やっぱり先生によって考えが違うな。目薬は今何を使っているかを聞かれて、2種類答えたが、これも元々は4種類で、それを2本にまとめてもらって楽になっていたのだ。また増えるのか。
そこへ、また看護師さんが入って来る。また何か緊急の事があったらしく、先生は指示を出す。そしてまた、
「はあ……」
ため息すな!と、思わず突っ込みそうになった。だってさ、私と関係ないのに、感じ悪いじゃん。本当に、病院勤めは大変そうだなぁ。そしてまた私の話に戻り、
「もう少し詳しい検査をしてみましょう。今日、お時間大丈夫ですか?」
と聞かれた。思わず「はい」と答えた。頭にはちらっと洗濯機の事がよぎったけれども。しかし先生は、
「それとも、また別日にしますか?」
と言った。
「そうですね」
と私も言う。
「今日は立て込んでますし。別日にしましょうか。1か月後くらいに」
と先生が言う。いやあ、立て込んでいるのは今日だけじゃないでしょう。前回もそうだったし、多分1か月後も、今は予約がなくて余裕がありそうでも、実際その時になったらやっぱり立て込んでいるに違いない。だがまあ、
「緊急でない人は後の方が」
と私が言ったら、それは否定的な感じだった。私も、あまりゆっくりしていて視野が更に欠けるとまずいのだろう。
「3月19日はいかがですか?」
と聞かれたが、その日は既に歯医者の予約が入っていた。その日がダメだと言ったら、
「じゃあ、4月2日はどうですか?」
と言われた。半月に1度しかチャンスがないのか!まあ、その日の予約を取った。やっぱり混み合ってるなぁ。大学病院が近くにあって助かるが、医師が足りないのか、患者が多すぎるのか、いつも混み合っている。東京にはたくさん大病院があるのに、それ以上に患者がいるのかねえ。
会計の堂々巡り
診察が終わり、予約票とスケジュール表をもらった。スケジュール表を見ていたら、やっぱりこのまま会計に行けばいいみたいだった。というのも、前回このまま自動支払機で支払いをして帰ってしまったが、後から受付に寄れって書いてあった!と思ったのだ。しかし、それこそ勘違い。書いてあったのは、検査が終わったら受付に寄ってくださいという事。診察が終わってからの話ではなかったのだ。
でも一応、受付に寄って、
「診察が終わったんですけど、このまま会計に行ってしまっていいのでしょうか?」
と聞いてみた。スケジュール表を見た受付の人が、
「特に、受付でお待ちくださいと言われていなければ、そのまま会計へお進みください」
と言った。更に、
「このバーコードをピッとやってください」
と。それで、自動支払機で言われた通りバーコードをピッとやった。が、画面には、
「この機械では会計できません。有人の会計窓口へお越しください」
とか何とか、出てきた。もう一度ピッとやってみたが、やっぱり同じ。自動支払い機は1つしかないが、空いている。一方、有人窓口の方は並んでいる。えー、前回は機械で出来たのになぜー?もしかして処方箋が出るとか?仕方なく並ぶ。気づけばもう12時半を過ぎていた。
やっと窓口へ行き、会計処理をしてもらった。別に処方箋は出なかった。支払いをクレジットカードですると言ったら、
「自動支払機でお願いできますか?」
と。また逆戻り?でもまあ、はいと言ってまた紙を受け取った。今度こそ機械で大丈夫なんだろうね。
機械へ戻ると1人が支払い中。待たされる。やっと自分の番になり、無事支払いができた。やれやれ。
土砂降り雨
病院を出ると、土砂降り。なんか、こういう事が多い私。大病院を出ると土砂降りに遭いがち。
傘を差して歩く。右目だけ瞳孔を開く目薬を点されたが、雨だし眩しいほどでもない。そして、どうせ右目はろくに見えないので、いつもとあまり変わりない。
だが、思いっきり右足のふくらはぎに水を跳ねかしたみたいだ。ズボンの裾がびっしょり。あまりにびっしょりで気持ち悪い。アーケードを通るので、アーケードに入ったところでハンカチタオルで少し水けを取った。とにかく土砂降りだ。
家に帰って、お昼を食べてから洗濯物を干した。干した時には古いネットが1つとうとう破けたな、と思っていたのだが、あとで長男のセーターの袖がぱっくり裂けているのに気づいて愕然とした。またか……。留守にしていたから大きい音がしたのに気づかなかった。まあ、それは別の話なのでこのくらいで。
鏡を見たら、右目の瞳孔がものすごく開いていてびっくりした。この間もそうだったか?明るいところで鏡を見ているのに、瞳のほとんどが黒目なのって気持ち悪い。思わず自撮りしてしまった。鏡を見たのも、なんかちょっと視界が白っぽいなと思ったから。もしかして、右目は目薬が効くのに時間がかかるのかな。
15年前のコンタクトレンズ
以上、大学病院の眼科へ行ってみた話の第2弾であった。結局、右目が見えにくい原因ははっきりとは分からず。緑内障のせいでしょうという事になった。視野が欠けているせい。いやー、そうかなあ。
また1か月後に検査をするので、またその結果を報告すると思う。そうそう、私がコンタクトレンズにしても見え方は変わらないですよね、と聞いたら先生は変わらないと言った。しかし、かかりつけの眼科医の先生は、コンタクトにすれば見え方が違うかもしれないと言った。
「前に使っていたコンタクトある?」
と先生に聞かれた。もしあれば、度は違うけれども一応試しにつけてみて、メガネよりも見えやすいようだったら新しくコンタクトを作ればいいと。私は、もう15年コンタクトをしていないから、多分捨てたと思うと言ったのだが、一応探してみて、あったら持ってきて、と言われていた。
そして、探してみたらあったのだ。15年前のコンタクトレンズが。しかし、15年放っておいたものだから、保存液が干からびていた。ケースを開けようとしてもビクともしない。ただ、もっと力の強い人に開けてもらえば開くだろう。かかりつけ医に行く日が近くなったら、一度開けてもらって水道水でも入れて、持って行こうかなと思っている。
今更コンタクトレンズにしたら、知り合いがびっくりするかな?しかし、ただでさえドライアイですぐ目に傷がつくのに、コンタクトなんて入れて大丈夫なのだろうか。指も以前にもまして不器用になっているから、レンズを洗う時に落としそうだなあ。でも、少し若返るような気もしなくもないし……。