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マティス~自由なフォルム展@国立新美術館

アート部の活動で、今回は2つの美術展に。5月12日(日)母の日。スタートは4人。六本木にある国立新美術館マティス展から。

マティスと言えば原色を使った、どぎつい絵を描く画家、というイメージはないだろうか。野獣派と言われた、印象派の後のフランスの画家。しかし、今回マティスだけに焦点を当てたこの美術展を見て、かなりイメージが変わった。イメージというより認識が変わったというのか。

それでは観て行こう。

入り口や、所々に表示がある。前半は写真撮影NG。後半はNGマークのないものは写真撮影が可能。つまり、半分は写真が撮れないという事だ。そこで私はさっと鉛筆を出す。入り口の図録を手に取り、余白に色々と書き込んでいく。後で読める字かどうか、不安だが。

Section1 色彩の道

マティスは法律家を目指していたのだが、虫垂炎をこじらせ1年ほど寝込む事になったそうだ。その時に母親から絵具箱を買い与えられ、そこから画業に目覚める。遅いスタートという事かな。

国立美術学校の試験に失敗し、装飾の学校に入ったとか、ギュスターヴ・モローに学んだとか、国立美術学校を中退したとか、あちこちで書いてある事が微妙に違ったりして、時系列を掴みにくい。だが、どれも本当の事なのだろう。

初期に描いていたのは、印象派的な絵だった。セザンヌやゴッホ、ルノワールのような。誰かと同じということではなく、この絵はセザンヌっぽい、この絵はゴッホっぽい、というような感じだ。

最初に絵を描き始めたのが21歳の時。それから15年ほど経った頃から、マティスの絵は変化してくる。点描画で描いた「日傘を持つ婦人」や、途中っぽい絵の「マティス夫人の肖像」などだ。

「マティス夫人の肖像」は、なぜ途中っぽいかと言うと、色をあまり塗っていないからだ。女性の顔が描かれていて、顔の一部は白いまま。髪の毛も白い。そして、その顔の周りに濃い緑色が塗ってある。背景の一部を塗って、顔を際立たせているという事なのか。

だが、その途中っぽさはなんか、こう……カッコいい。オシャレというか、新しいというか。首のところも影のところだけ肌の色で塗ってある。まあ、女性の絵には見えない感じだが、そこがまた新しい。

そしてこの頃には、何ととか彫像を作っている。ブロンズ像もある。ごつごつした彫像や、頭部だけのツルツルのブロンズ像。マティスが彫刻をやっていたなんて知らなかった。だが、時々マティスっぽい色柄の壺もあったりする。つまり、原色でカラフルな。

Section2 アトリエ

フランス北部で生まれたマティスは、絵を描き始めてからは南仏のトゥールースやコルシカ島などで活動していたが、50歳ごろに南仏ニースに滞在してからはこの街でアトリエを転々とさせるようになった。マティスにとってアトリエは、創造の場であると共に主題の1つでもあったそうだ。

展示室には、上の方に大きな白黒写真が飾ってあった。どの展示室にも、1つか2つ。どれもマティスが写っている。もっと古い画家だと写真はない。マティスは新しい画家なのだと思わされた。

アトリエにあった家具やカーテンなどが展示されており、それが実際にアトリエに置いてある様子が写真で紹介されていた。この、写真がある時代という事と、マティスの画法の変化とは、きっと関係があるのだと思った。写真のように写し取っても仕方がない。もっと概念的な、象徴的な、記号的な描き方をしなければ意味がない。そういう時代の変化があったのでは。

ロカイユ様式の肘掛け椅子」という絵があった。アームのところが緑色でものすごくグニャリと曲がっていた。これは概念的な何かか……と思って観ていたのだが、その後椅子の実物が展示してあるのを観てびっくり。実際にその椅子のアームはグニャリと曲がっていたのだ。

絵具箱が展示してあった。これは本物か、それともレプリカなのか。それは分からなかったのだが、パレットがいくつも展示してあった。そっちは本物だった。本当に、マティスが使っていたパレットのようだ。

油彩画のパレットは、使い捨てなのだろうか。今はどうなのか分からないが、マティスが使っていたパレットは木製で、そこに色々な色の絵具が出されている。ぶにゅっと盛り上がっている色もあれば、ほとんど平らに伸ばされている色も。

そのパレットが6つくらい、ガラスケースの中に並んでいた。1つ1つ、パレットに出されている色は違う。たくさんの色が出されているパレットもあれば、色数が少ないパレットもある。ああ、これらのパレットがそれぞれどの絵を描く時に使われたものなのか、それが知りたい。

眠る人」という絵があった。これはとても優しい感じがした。

ザクロのある静物」という絵には、どうしてか惹かれた。パンフレットに小さく写真が載っているが、これだと魅力をあまり感じない。でも、実物には惹かれた。解説には左の緑が奥行だかバランスだかがどうの、と書かれていた。まあ確かに、赤やオレンジがある絵なので、緑色が入る事で色のバランスは良くなっているだろう。けれども、惹かれたのは色のせいか?ザクロらしい果物は1つで、周りにはオレンジ色の丸いものがたくさん転がっている。そのオレンジ色の物と、背景との隙間の白に、なぜか惹かれた。

図工や美術で習ったはずだ。背景から塗っていけ、白い所がないように色を塗れと。まあ、油彩画と水彩画は違うにしても、この乱雑な感じが、オシャレ?後ろの女の人の顔の絵なんて、雑だなーって感じなのだが、そこがまたオシャレなような。

雑と言えば、どうもマティスは人の顔を描かない。描かないか、簡略化する。顔が苦手なのかな、と思った。

しかし、デッサンのエリアになったら、女性の絵がたくさん出てきたのだが、顔もちゃんと描いてある。そうか、苦手ではないのか。いや、筆で描くのが苦手なのかな?

Section3 舞台装置から大型装飾へ

マティスは舞台装置衣装のデザインも手掛けていたそうだ。注文を受けてやっていたそうで、私は思った。画家は絵を買ってもらわなければ売れないので、なかなか成功するのは難しい。一方、デザインの方は商業的な価値が高く、注文を受けやすいのかなと。マティスは色々な所からデザインの注文を受けている。

マティスは、パリのオペラ座公演「ナイチンゲールの歌」において、舞台装置と衣装のデザインを手掛けた。そこには中国の皇帝など、アジアの国の人物も出てくるらしく、マティスはパリのギメ美術館へ行って勉強したとか。

だが、中国の皇帝の衣装と思われるものには龍の絵かな?という物の刺繍が施されているのだが、龍にしては手足がなく、角もない。ヘビに狼系の頭が付いているだけだったりする。

また、日本の匠の為の衣装、とされる衣装には、梅の花をモチーフにした模様があるが、どうも金髪の三つ編みを結ったものに赤い帽子、というのが全然日本っぽくない。だが、梅の他にものような模様や、陶磁器によく付いている模様をくっつけているようなところも。面白いというか、可愛い。マティスっぽい感じは出ていた。

お次は壁画だ。アメリカのバーンズ財団から依頼を受けた装飾壁画は、ダンスを主題とした15m超の巨大壁画。このダンスは、東京オリンピック2020大会で使われたピクトグラムを思い出させる。女性なのはわかるが、顔などは無し。ダイナミックな動きを連続させた模様。それが、いくつもの色パターンで展示されていた。私はグレーが好きだったが、公式サイトやミュージアムショップで扱われるのは3色くらいのやつだ。

これ、本当に大きいから、マティスは長い竹の棒に描く物をつけて、それで上の方を描いていた。数十センチの台に乗りつつ、腕をいっぱいに伸ばし、1メートル以上の竹竿につけた物で描いている写真があった。もっと台を高くする事は出来なかったのか?

Section4 自由なフォルム

お次はいよいよ「切り紙絵」だ。マティスは晩年、弟子に色を塗らせた紙をハサミで切って貼る、と言う技法を取るようになる。この展覧会に来る前には、展覧会の宣伝などに「切り紙絵」と書いてあるのを見て「マティスが切り紙絵?」と意外に思ったが、ここまで観てきたらもう、意外でも何でもない。マティスは切り紙どころか彫刻も舞台装置も衣装デザインもやってきたのだ。何でもやってみるタイプなのだ。そのマティスが切り紙絵をやってみたところで驚きはない。マティスにとって切って貼るという技法は、色面の構成を考えるのに有効な手段だったようだ。印刷物にも適応しやすいという面もあったという。

さあ!ここからは写真撮影OKだ。まずはどーんとチケットにも印刷されている絵。カラフルで綺麗。「花と果実

これだけでは大きさが分からないだろう。4×8メートルだそうだ。実際にアトリエにある時の写真も撮ってきた。そこには顔もあるね。この顔も可愛かった。

大きな頭部、仮面」という絵↓。なんでかなー、シンプルなのにとても惹かれる。

他にも顔の絵

なーんか可愛いんだよね。

おっと、それてしまったが、「花と果実」をもっと近くから。本当に切り紙?と思ってよくよく見てみた。非常に分かりにくい。

お次は、パンフレットの表紙にもなっている「ブルーヌードⅣ

先ほど出てきた壁画の「ダンス」も、このブルーヌードに近い。こんな人物がダンスをしていたのだ。それにしても、これなら切り紙絵だと分かる。

こちらは紙ではなく、陶器かな。つやつやで膨らんでいて可愛い。

タペストリーもあったが、こちらはデザインしたマティスよりも、デザイン通りに織ったのか?という驚きの方が強かった。細かいし。あの写真がないのは、撮影できないところだったのかな。

日本の仮面」というのもあった。そうだ、これは撮影不可だったな。日本の仮面と言うと能面?とも思うが、どうもお面には見えなかった。どこが顔か?だが、黄緑色と紺色の組み合わせなのは、何となく日本の能っぽいかな、と思ったり。

Section5 ヴァンスのロザリオ礼拝堂

なんと、マティスは礼拝堂を丸ごとデザインしたそうだ。南仏ヴァンスにあるドミニコ会の修道女のためのロザリオ礼拝堂。その室内装飾から調度品、祭服に至るまで、デザインのほとんどを指揮したそうだ。しかし、そのデザインのモチーフは、先ほどタペストリーの話をしたが、「ポリネシア、海」というタペストリーに出てくる海藻や花などとそっくり。今しがた写真を載せた陶器の切り絵の雰囲気だ。

これでいいのか?南国ではなく、フランスでしょ?と思ってしまった。だが、可愛い。何と言っても可愛いし、明るい。なんだか優しい気持ちになれそうな礼拝堂ではないか。

まずは採用されなかったという「蜜蜂」↑。これが好き、と言っている人もいた。あ、通りすがりの知らない人だが。

ステンドグラスの一部の展示↑。ほらね、ポリネシアっぽいでしょ?

私はこれが好き。でっかいのよ、これ↑。

実際の礼拝堂の写真↑。奥に細長い絵があるの、分かるかな。

キリストの磔刑像↑。

ああ、これと比較すると大きさがわかるか。人がいなくなるのを待ったが、後ろに列が出来ているような気がしてこれ以上待てなかった。

お次は祭服↑。黒いのが普通だと思ったが、その後はカラフルなものがたくさん!

見れば見る程に可愛く見えてくる。特に色のコーディネートがいい。首から下げる帯みたいなの、それの模様と服の模様との関係がすごくいい。

この辺の色合いがツボにはまって来た。もう、こういう服を買ってしまいそうだ。

再現された礼拝堂

最後に、その礼拝堂を再現した場所があった。なかなか盛り上がる構成ではないか。

「動画はご遠慮ください」

と言われた。写真はOKだと言う。最初は薄暗く、だんだんと明るくなってきた。なるほど、一日の日差しを再現しているわけか。

フランス人にとって、南仏は明るい、暖かい所なんだろうな。日本人にとっては沖縄みたいなイメージかな。ゴッホや、あとは誰だっけな。フランスの画家は南仏に行くと明るい色、原色などを使うようになるよね。まさに、このステンドグラスもそんなイメージ?

1枚目よりも2枚目の方が日が昇って来たイメージ。写真だとあまり変わらないが、実際には色が濃くなった。ステンドグラスが良く映える床。

しかし、礼拝堂という真面目な場所に、この絵だからねえ。どう?

こっちも。先ほどの実際の礼拝堂の写真に写っていたね。でもやっぱり、可愛い。

夕方になると光がこちらへ差す↑。なかなか幻想的。

いやー、良かったな。面白かった。

さ、ここでアート展は終わり。それにしても展示室内は寒かった。前にもここに来た時に思ったのだが、忘れていた。もう夏という事か。冷房の風が足元から吹いてくるのだ。ワイドパンツを履いていたので、下からの風でお腹まで冷えそうだった。

ミュージアムショップも色々魅力的だった。もしこの絵のがあったら、この絵のステッカーがあったら買ったのに、という惜しい感じで何も買わず。そうそう、あのパレット!マティスが実際に使っていたパレットを模した手帳が売っていた。指を入れる丸い穴があるのだ。パレットなんて他で見た事もあまりなかったし、これは独特だ。もう少し安価だったら買ったのだけれど……。

コラボメニュー

最後はご飯。いつもの地下1階のレストランで。今回は何かの絵をモチーフにしてあるのではなく、恐らくマティスっぽい色合いのお料理、という事だと思う。

牛すじ肉の煮込み、バターライス添え……だったと思う。目が悪くてなかなか字が読めず。実は、私がトイレに行ったので、注文を一緒にしてもらったりして、あまりじっくりメニューを見なかった。

これは南仏料理なのだろうか。変わった味だった。最初に食べた時、酸っぱいと思った。この料理から酸味を感じるとは意外ではないか?だが、牛肉は柔らかく、ナスやパプリカ、オリーブなどの野菜がたくさん入っていて、全体としては塩味の少なめなビーフシチューといった感じだった。バターライスもそれほどバターがきつくない。慣れない味だが美味しかった。左上にあるのはマッシュポテト。

まとめ

ここまで、マティス展のレポであった。マティスだけのアート展は初めてだった。マティスがこういうアーティストだったとは。彫刻に壁画に切り紙絵に、衣装のデザインや舞台装置まで!

画家としては「野獣派」などと言われたようだが、どちらかと言うと可愛らしいデザインをする人だった。カラフルポップ。マティスはデザイナーだった。かな?いや、総合芸術家。多彩なアーティスト。色々と試してみる、新進気鋭のアーティストだった。

前半の写真不可だったところも含め、いくつか公式サイトに写真が載っているので、気になる方はこちらから→マティス 自由なフォルム | 企画展 | 国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO (nact.jp)

さあ、この後は森美術館の「シアスター・ゲイツ展 アフロ民芸」へ!そちらのレポは次のブログで。