少し前の事だが、本屋に行くと「ブラック・ショーマンと覚醒する女たち」の単行本が最新本の棚にたくさん並んでいた。その下に、この「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」の文庫本が置かれていたのだ。名もなき~の方が1巻目で、覚醒する~が2巻目という事らしい。
2巻目が出た本というのは、2巻目が面白いかどうかはさておき、1巻目が面白いのは間違いない。面白くて、人気があったから続編が出たのだから。
というわけで、迷わず文庫本を手にした。
あらすじ
読書感想文には「あらすじ」を書くのが定番だから、一応この題目で書くが、これから読む人の為に、あまり詳しくは書かない。だって、これはミステリーだもの。ネタバレしては面白くない。
このお話は、ミステリーの王道だ。最初の「プロローグ」には少し驚いたが(この先何が始まるのか、とワクワクしたが)、本編ではまず殺人が起こり、主人公が現れ、探偵が現れる。探偵が独自に捜査を始め、主人公がその助手となる。容疑者が複数人浮上する。探偵の考えている事は主人公にも分からない事が多い。そして、ついに探偵は謎を解き、容疑者が集められ、探偵は推理を披露する。これで犯人が特定され、めでたしめでたしだ。
しかし、最後にエピローグが残されていた。もう事件は解決したのに、あとは何が書かれるのか?と思ったら、ああ、その謎がまだ残っていたか!というもので……。いやー、流石の東野圭吾、面白かった。
感想
もう「面白かった」と書いてしまったが……気を取り直して感想と行こうか。
主人公は婚約中の女性だ。その父親が殺されてしまった。探偵は主人公の叔父で、元マジシャン。マジシャンとはスリもピッキングもハッタリも、そして誘導尋問もお手の物、かどうか本当のところは分からないが、そんな感じで叔父のイカサマ師っぷりは見事だ。
読み進めて行くうちに、私はこう思った。
「頭の良い人物は、作者も頭が良くないと書けないよなあ」
と。東野さんも相当頭が良いのだろう。そりゃそうだ。けれども、だんだん気になる事が出てきた。
「わかんない」
「え、どういうこと?」
という主人公。叔父から、
「ちょっとは自分で考えろ」
「そんな事もわからないのか」
などと言われる。そして、こちらも少しうんざり。本当にそんな事も分からないの?と思ってしまう事も。つまり、頭の良い人物を書くなら、周りを頭の悪い人物にすれば、何となく成立するのか、と思ってしまった。
とはいえ、それは一部の事。大抵はこちらも分からないような事を、叔父は先回りして考え、周囲を驚かせる。
細かい事
何回も特殊な描写が出てくると、気になる。私は今回「うんうんと頷いた」とも言い換える事の出来る描写を、「首を上下に振った」と書いている事に少し違和感を覚えた。
いや、言い換えると「頷いた」だ。おかしいわけではない。だが、私なら「頷いた」と書く。他に「首を横に振った」「ゆっくりとかぶりを振った」なども出てくるのだが、それは気にならない。横に振る事があるなら、縦に振る事もある。だが、首を「縦に振る」ではなく「上下に振る」というのが特徴的で、一度頷いただけなのか、何回も頷いたのかがよく分からない。何となく、振ると言うからには何度もうんうんとやったような気がする。
とにかく、何度も出てきて気になった。東野圭吾さんの癖だろうか。私はついこの間東野圭吾作品を読んだばかりだと言うのに、その点には気づいていない。もしかして、小説によって変えている?ちょっと細かい事なので、その描写の箇所を探そうとしてもなかなか見当たらない。他の作品で探そうとしても、なおさら見つからないだろう。不確かで申し訳ない。ま、とにかく気になった事だった。
もう一つ、細かい事だが……いや、細かいというよりも、どうでもいい事だが(笑)
その叔父、元マジシャンだが、その風貌とセリフ回しからか、私には、ある声優さんの声があまりにドンピシャで、最初から最後まで、ずっと叔父のセリフはその声優さんの声で読んでいた。不思議だ。誰の声なのかなーと考えていたが、その風貌もアニメで見た感じがする。もしかすると……Dr.STONE(ドクターストーン)の主人公、千空(せんくう)のお父さんかもしれない。風貌も、そして声も。いや、声違うかなぁ。分からないや。ま、これ、本当にどうでもいい事なのだが。
以上、感想文であった。ぜひ読んでみて欲しい。これぞミステリーの王道。私はいつものように、最後まで犯人が分からなかったが、皆さんはぜひ、読みながら犯人を当ててみて欲しい。
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