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【読書感想文】池井戸潤「シャイロックの子供たち」は相関図を作りながら読むべし!

私の好きな作家ベスト5に入る、もしかしたら今現在1位かもしれない池井戸潤先生。映画化もされ、店頭に派手に並んでいた彼の作品「シャイロックの子供たち」を、手に取らないという選択肢はなかった。すぐに読みたかったのだが、積読本が他にあった為に少し遅れてしまった。が、読み始めたら一気に読んだ。そりゃあそうだ、続きが気になって仕方がない。まるで現実にニュースを見てその事件に衝撃を受けたのと同じような感覚で、次々に衝撃を受けるミステリーなのだから!

あらすじ

大田区の東急長原駅前にある東京第一銀行長原支店が舞台となり、様々な銀行員の物語がオムニバス形式で語られる。それは時に物悲しく、時にものすごくつらく、時に少しだけホッとしたりする。短編集なのかと思わせておきながら、やはりそれは徐々に繋がりを見せる。

そして、事件は起こる。100万円紛失事件だ。痴情のもつれなのか、ギャンブルに堕ちたものの犯行なのか、怨恨なのか……。事件は思わぬ様相を見せ、ただの紛失でも窃盗事件でもない、銀行ならではの事件に発展していく。

常に新しいミステリー

驚いた。そんな展開になるとは。オムニバス形式で描かれる中で、一人の行員が見せた行動に度肝を抜かれた。こんな展開、誰が読めようか。そして、他にこんなドラマを観たことがあるだろうか。さすが池井戸先生。思わず鳥肌が立った。

読んでいてつらい場面もあった。それでも、後半になると事件の謎解きに忙しく、つらさもなくなっていった。犯人は誰なのか、犯人の目的は何なのか。銀行に詳しい作者だからこその、緻密な描写にしびれる。

相関図を書くべし

これから読み始める人には、ぜひ進言したい事がある。

この小説には、たくさんの行員が出てくる。一人の話をある程度描き、また次の人の話へと続いて行く。ぽかんとただ眺めていては、悲しいかな、後で混乱してくるのだ。

だから、登場人物が出てきたら、名前を書き留めておいた方がいい。できれば相関図を書いておくのが良い。どこの課の誰それ、そしてその家族構成。

私も中盤以降、相関図が欲しいと思った。映画化されているし、調べたら出てくるのではないかと思った。だが、検索するのが怖かった。ネタバレがあるかもしれないからだ。なので、自分で適当にでもいいから書き出しておくのがお勧めだ。私は書いておかなかったので、何度か前のページへ戻って確認してしまった。

読後感

池井戸先生の小説は、たいてい最初はつらい。だが、最後にはスッキリ爽快になる。

この「シャイロックの子供たち」に関しては、私は他の作品以上に最初がつらいと感じた。閉塞感、焦り。現代人の多くが抱えていそうな悩みがこれでもかと書かれている。

しかし、多くの若い人がこれを読んでしまったら、銀行員になりたがる人がいなくなってしまうのでは?と思ってしまう。映画化して大丈夫だったのかな。とか余計な心配をしてしまった。それに、銀行に限らず、社会に出て働き、家族を持つ事に絶望してしまうのでは、とも思ってしまった。

だが、やはり池井戸作品だった。つらいのは最初だけ。中盤からは面白くなり、最後にはやはりスッキリ爽快だった。そりゃあ、全てが上手く行ってめでたしめでたし、という訳でもないかもしれない。でも、読後感は良い。そして、不思議と銀行員という仕事も悪くないと思ってしまう。

それは、結局人の道を踏み外した人はダメだが、踏み外さなかった人は救われるという、そんな構図がうっすら見えるからかもしれない。

この小説の主人公は、北川愛理だなと思ったが、映画の主人公は阿部サダヲなの?これ、誰が誰の役をやったのか、気になるなぁ。これは映画も観ないと。

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