まず、題名から目を引く。先生、と言っているから学生の発言らしい。皆の前でほめないでとは。いや、分かるけど。
概要
筆者の金間先生は、金沢大学の教授である。その先生が、最近の大学生の言動を調べ、詳しく語っている。
これは、去年2021年に書かれたもので、初出版は今年2022年の3月である。
つまり、本当に「今」の事だと思っていい。イマドキの大学生や、高校生、社会人1,2年目の若手社員は何を考えているのか、これは企業の採用担当者や、若手の部下を持つ上司には必見の書である。
内容
それでは、実際どんな風に学生を見ているのか。
題名にもあるように、皆の前でほめて欲しくない、つまり良い意味であっても目立ちたくない。
ちょっと前までは、「悪目立ち」という言葉が流行ったようだが、悪くなくても目立ちたくない。横並びがよい。
更に、自分に自信がなく、自分で何かを決められない。指示待ち人間だとも。
興味が沸いた方は、実際に読んでもらいたい。金間先生は言葉選びが面白いので、するする読める。時々クスッと笑ってしまう。きっと大学の授業も面白いのだろうと察する。私が学生だったら、きっとこの先生が好きだろうな。
ただ、実際の若者がこれを読むと腹を立てるかもしれない。おちょくられているように感じるから。いや、もしかしたら「自分は違うな」と思って一緒に笑うかな?
大方、中年向けの、つまり会社の上司などに向けた内容になっているのだが、最後の章だけは若者向けに書かれている。それまで述べてきたイマドキの学生に対し、本当にそれでいいのか?もし変えたかったら変えられる、そのためにはこうしてごらん、と書いている。
その最後の章は、主旨としてはすごくいい。だが、紙面をあまり取れなかったのか、ちょっと分かりにくい気がする。言葉が急に難しくなったし、ちょっとそれは難しいんじゃないかなーという内容が多い。これを読んで、実際にいい子症候群の若者が変われるとは思えなかった。私は若者じゃないが。
いい子症候群
先に出してしまった「いい子症候群」という言葉。著書の題名には副題がついていて、それは「いい子症候群の若者たち」というものだ。
いい子症候群とは、真面目で協調性があるが、リーダーになりたくない、目立ちたくない、自信が無いなど、もっと著書には例が載っているが、私が察するに「叱られたり、失敗する事を極度に恐れて、自分のやりたいように出来ない子」かな、と思った。
うちには二人の息子がいるが、次男はまさにこれ。大した事でもないのに、自分で決められずに支持を待つ。叱られるのがそんなに嫌なのかな、と疑問に思うくらい、ごまかそうとする。仮病が本当の病気になってしまうくらいに。実際そんなに叱られないのに。
だが、次男は自分に自信がある。自己肯定感は高めだ。良い事で目立つのは嫌いじゃなさそう。だから、完全にこの本に書かれている「いい子症候群」に当てはまるわけでもない。
かつては・・・
しかし、読み進めて行く内に、とくに就活の話などになってくると、昔の自分を思い出した。いい子というわけでもないのだが、なんか、消極的で自信がないのがすごく当てはまってしまう。
大学生って、自分でアルバイトをしたり、旅行に行ったり、自分から何かしないと、学業を修めるだけの、まるで仙人のようなものになってしまう。私はまだ、バンド活動をしたが、それも本当ならば他大学の有名なバンドサークルに入りたかったのに、一歩を踏み出せなかった。アルバイトも色々してみたかったが、結局自信が無くて家庭教師のみ。海外旅行だけは行ってみて、本当に良かった。
就活も、就職氷河期だったから仕方ないとも言えるが、妥協ばかり。そして、私はどもり症があるから仕方ないかもしれないが、「人前で話す事」や「電話を掛ける事」を避けたいが為に、やりたい事もやらずに我慢してしまう。
氷河期とどもり症がなければ・・・と思うが、それはいつの時代だって、そして誰にだって何かしら足かせはあるもの。きっと、それらが無くても、他の理由で尻込みしていたに違いない。
で、思ったのだ。昔からこういう若者もいる。
ただ、この著書を読んで驚くのは、そいういう昔からいた消極的な若者が、今の若者の大半を占めるという事だ。だから、起業する人も減るし、日本の行く末は心配だ。皆私みたいだったら困るから(笑)
とはいえ、年齢を重ねると、それなりに経験と自信が備わり、後からやりたかった事が出来るようになるのが今の世の中のような気がする。昔は、就職したらそれで一生が決まるような気がしたけれど、今は後からでも色々出来る気がするから。
若者も、自分を客観的に見られて、為になる本だと思う。そして、身近にいる若者を理解するためにも、中高年には是非読んでもらいたい本である。面白いし。
先生、どうか皆の前でほめないで下さい: いい子症候群の若者たち 単行本 https://amzn.to/3hindPQ