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私がライトノベル作家になろうと思った理由~ごとうしのぶ「BLUE ROSE」を読んで~

2022年4月22日(金)

タクミくんシリーズの10年後

角川書店
崎義一の優雅なる生活「BLUE ROSE」

このお話は、角川ルビー文庫の「タクミくんシリーズ」の続編である。タクミくんシリーズというのは、葉山託生と崎義一の恋愛を描いた小説で、全寮制の高校三年間が描かれている。二人の恋愛を軸に、友人達の恋愛友情託生の成長などが幅広く描かれており、感動の涙を誘う壮大なストーリーである。

このシリーズにハマってから、新刊が出るのを心待ちにしており、Amazonからお勧めのメールが来ると即予約して買うという、鴨と化した自分。一度はBLから足を洗ったにも関わらず、これだけは読むのを辞められなかった作品。そのタクミくんシリーズが、唐突に終わった

高校三年間が終われば、きっと最終回が訪れるのだろうと思っていた。それにしては、何年も何年も続いていて、もう終わらないんじゃないかとさえ思っていたのに、まだ高校三年生になったばかりの頃に、突然終わってしまった。だが、これが最終回だとは思えなかった。何しろ、ハッピーエンドではなかったから。ギイ(義一)が突然何も言わずに託生の前から姿を消し、音信不通になって終わってしまったから。

だが、続きはすぐには出ず。やっと待望の続編が出たのがこのBLUE ROSEだ。

うーん、これは言い切っていいのか?何しろ、ルビー文庫で出ていたのに、角川書店から出て、なんと講談社からもタクミくんシリーズの本が出ているのだ。それに、必ずしも時系列に沿って物語が紡がれるわけではなく・・・。

今回、やってしまったのだ。あれほどAmazonからのお知らせに敏感に反応していたのに、ごとうしのぶ先生をフォローしているのに、一冊抜けていたのだ。この「BLUE ROSE」の後、「エリカの咲く庭」、「太陽の石」と読んで、最近出た「フラワーシャワー」を買って、そこの帯を見て悟ったのだ。「太陽の石」の前に一冊あると。道理で、なんかおかしいとは思ったのだが、何しろ必ずしも時系列通りに書かれるとは限らないと思って・・・。間にあったのは「忘れえぬ此の花を、此の思いを」で、それを早速買った。

それで、じゃあ読んでなかった「忘れえぬ~」を読み、「太陽の石」はもう読んだから、「フラワーシャワー」を読むか?どうも、それではダメな気がする。ちゃんと、読みたい。ちゃんと解かりたい。

と言うわけで、だいぶ前に読んだ「BLUE ROSE」から、順番通りに一気に読むぞ!と思い立った訳である。

BLUE ROSEのあらすじ

託生が高校を卒業し、音大に入り、音大の時に優秀な学生に選ばれてニューヨークへ行き、そこでやっとギイに再開した。音大を卒業した託生は同じ歳で天才的バイオリニストで音大の教授で、ギイの幼なじみの井上佐智の助手となっている。そんな29歳の話として始まる。

ギイというのは、世界的大企業の御曹司であり、天才であり、英語と日本語のバイリンガルであり、ものすごく顔もスタイルも良く、顔も広いという人物なのだが、そのギイが全ての仕事を突然リタイヤする。そして、日本に住む事になった。出来れば託生と一緒に住みたいと思っているが、託生がなかなかOKしてくれないのだ。

ギイが託生を自分の家に呼びたい、出来れば一緒に住みたい、という一本の線と、オールドバイオリンの謎という線とが同時進行で進んで行く。謎の外国人が井上佐智にと古いバイオリンケースを届けた。そのバイオリンケースには何が入っていて、誰が何の為に佐智に贈ったのかという謎を、ギイが解こうとする。託生の音大での出来事も描かれながら、バイオリンの謎が解けていく中で、とうとうギイが望みを叶えた!

泣かせる物語

ただ、恋人が自分の家に引っ越してくれる事になった、というだけの事なのに、あのギイが、

「ーよしっ!」
手に入れた。
もう絶対に手放さない。

という辺り、なぜか泣けるくらい感動した。ギイは自信家で、自分で望まないのにモテまくりで、それなのに託生に嫌われるのが怖くて、実に慎重に、託生の心を尊重しながら、事を進める。他の事は強引に、何でも上手くやってのけるのに、だ。そんな彼が思いを遂げる瞬間は、ぐっと来るものがある。

全体的にそうなのだ。タクミくんシリーズは託生の一人称で書かれているが、時々ギイの一人称で書かれる部分がある。私はその部分が好きだった。そこから、私のいくつかの小説が生まれたと言っても過言ではない。ギイとタクミの、ギイ目線の物語が書きたい、と思って書いた作品があるのだ。それくらい、影響を受けている。

託生は自分で言うところによると平凡で、バイオリンが弾けるけれども突出した才能はなく、自分が人に恵まれているのはギイのお陰で、弱いし何も出来ない。それでも、芯が強く、人の為に必死になれる人だ。ギイに対しても甘えることなく、少し臆病だけれども、誠実でありたいと思っている。

ギイが思いを遂げるところ、徐々に盛り上がっていくところで青いバラの話が出てくる。託生がニューヨークへ行ってやっとギイと再開出来た時に、ギイが託生に青いバラを一輪渡したという話。再開出来た時、お互いにどれほど嬉しくて、感動したか。

ごとう先生は、感動させるのが上手すぎる

決意のバレンタイン

この本には、「BLUE ROSE」の他に「決意のバレンタイン」と「薔薇の記憶」というお話が収められている。決意のバレンタインでは、ギイと託生が連絡も取れずに、離ればなれになっている高校三年生の終わり頃の話が書かれている。

ギイが、なぜ託生や他の友達に連絡が出来なかったのか、なぜ急にアメリカへ行ってしまったのか、その理由がこのお話でやっと分かるのである。高校生の時に何だかんだあって託生がバレンタインデーにギイに送ったチープなハートチョコレートを、ギイの自宅に送った託生。それを、ギイの妹が親に内緒で他のたくさんのチョコと混ぜてギイに送るのだが・・・。これもまた、感動するのだ。小さい感動だけれど。

「薔薇の記憶」は、ただバイオリンを演奏しただけなのに、今日はやけに機嫌がいいねと言われた託生が、自分は思っている以上にギイの事が好きなんだな、と認識するほっこりする話である。機嫌がよかった理由が、本当に些細な事で、それ故に、ギイの事が・・・なのである。面白い。

ライトノベルだけれど

ごとう先生の書く小説は、ライトノベルだ。ルビー文庫の時には、おおや和美さんの挿絵が入っており、それがまた人気で、とても小説にマッチしていたと言えるのだろう。

ごとう先生は音楽をやっていた方で、ピアノの先生を経て小説家になったそうだ。託生がバイオリンをやっていると言う事で、小説内ではちょっと素人には理解しがたい程の音楽知識がちりばめられており、ピアノをやっていた私でも、難しいところが多々ある。

そのうえ、一文が長い時がある。そして、三人称で書いている時でも、時々一人称で書かれている。一見誰の気持ち?と思う所も。前後から類推は出来るのだが。

だが、読みやすいというか、とっつき安い文章である事は間違いない。ごとう先生らしい文章である。それに、何しろ構想がすごい。一つ一つのエピソードは壮大で、必ず感動が待っているとは。尊敬する。そして、泣ける。悲しくて泣くのでも、可愛そうで泣くのでもないのだ。感動するジーンとくる。何ていい人なんだ、とか良かったーとか、愛だなぁとか。

私はかつて、文学賞を取るような、そして教科書に載るような小説家になりたいと思っていた。主に「見返してやる」精神から来た目標だったかもしれない。しかし、このタクミくんシリーズに出会ってから、色々と考えた。

私はライトノベルが好きだ。日本文学全集も読み漁ったし、昔は文学賞を取った作品も読んでみた。面白い純文学作品もあるが、涙を流すほど感動するものは少ない。

私は、一人でも多くの人に感動を与えたい。と言うとちょっと偉そうに聞こえてしまうかな。つまらない日常だったり、辛い事があったりしても、夢中になって読める本があると、その時だけは幸せになれる。楽しくなる。そして、人生に楽しみが出来る。小難しいものは、疲れている時には読めない。

私は、一部の頭のいい人、読解力のある人だけを幸せにしたいんじゃない。普通の高校生とか、大学生とか、特に文学を学んでいないような人たちにこそ、私の小説を読んで幸せを感じて欲しい。頭のいい人には、私よりももっと頭のいい人が書いた高尚な純文学を読んでもらえばいいから。

だから、教科書に載らなくてもいいし、大金持ちにもならなくていいから、小説家になりたいと思った。タクミくんシリーズのような、素晴らしいライトノベルが書けたら・・・それが今の私の夢である。

そして、私が無料でWebに投稿しているのも、一人でも多くの人に読んでもらって幸せになってもらいたいから。出版社に送りまくっても、結局は一生日の目を見ないかもしれない。それならば、いつか多くの人に認められて書籍化される事も夢見つつ、読んでくれる人に一人でも多く出逢いたいと思っているから。

ラインナップ

巻末に、タクミくんシリーズの一覧が載っていた。

これを見たら、すごく懐かしい気持ちになった。こうして見ると、高校内でのお話と同じくらい、夏休みなどに外へ出かけたお話が多い事に気づく。壮大さを思わせるのは、島だったり山だったり、壮大な景色が頭に浮かんでくるからかもしれない。スキーの話も泣いたなあ・・・。

以上、BLUE ROSEの感想であった。次はエリカの咲く庭!乞うご期待。

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