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【読書感想文】ユヴァル・ノア・ハラリ「サピエンス全史」を読んで

2022年4月13日(水)

作者について

ユヴァル・ノア・ハラリ氏は1976年生まれのイスラエル人歴史学者。

中世史・軍事史の専門家のようであるが、生物学や科学、宗教など、その知識の広さ、深さには驚きを隠せない。

衝撃を受けた、人類の淘汰

他の動物には色々な種があるのに、人類には現在一つの種しかないらしい。

歴史で皆が学んだ、猿人からアウストラロピテクスに進化し、ネアンデルタール人になり、その後にホモ・サピエンスが生まれたという構図。それが、ちょっとした勘違いのようだ。

人類は他にホモ・エレクトスだとか「ホモ・~」という種が地球上のあちこちに存在したらしい。ホモ・エルガステルからホモ・エレクトスが生まれ、ホモ・エレクトスからネアンデルタール人が誕生し、ネアンデルタール人が私たちホモ・サピエンスに進化したと、時系列的に考えるのは間違いで、それぞれが地球上に同時に存在していたのだ。生まれた順番というのはあっただろうが。

しかし、今人類はホモ・サピエンスしかいない。これは、他の動物と比べると特異な事だそうだ。つまり、サピエンスが他の人類を皆滅ぼしたのではないか。しかし、その証拠はもちろんない。何しろ有史以前の話なのだから。

認知革命

ずっと疑問に思っていた。ずーっと何万年も同じような暮らしをしてきたサピエンスが、この数千年の間に一気に暮らしに変化が起こったのはなぜなのか。その答えが分かった。それは認知革命が起こったからなのだそうだ。

我々は想像する事が出来る。目の前にない物の存在を信じる事が出来る。それが、他の人類にはなく、サピエンスにだけ持つ事が出来た能力だそうだ。そのために、皆で同じ神を信じる事で大勢が協力する事が出来た。

面白かった例えが、もしサルを1万匹も1ヶ所に集めたら、大変な騒ぎになるが、我々は一つのスタジアムに何万人も集まって観戦したり、集会を開いたりする。なるほど、それが認知革命のなした技なのか。

それにしても、目から鱗だったのは、我々は共通の虚構を信じているという話。宗教の話ではないのだ。科学もそうだし、経済もそう。例えば、「会社」という物は実際には何も存在しないものだ。社員や社会がその存在を信じているから「ある」のだ。そんな話が色々な例で書かれていた。とても面白かった。

農業革命

狩猟採集民が、農業革命によって大きな社会を作った。それは事実だが、それによって人々が豊になったわけでも、幸せになったわけでもないという。実は、能力も狩猟採集時代よりも落ちたし、却って辛い人生を送る事になってしまったと。食料不足も、栄養不足も招いた。だが、一部の特権階級が出来上がったのは確かだ。確かに、そう歴史で習った気がする。

通貨

サピエンスが信じる虚構の中で、一番成功しているのがお金だそうだ。確かに。今や世界中のサピエンスが同じものを信じている。通貨の種類は違っても、それを米ドルに交換する事は出来る。金があれば何でも買えるというのは、みんながその価値を信じているからこそだ。なんと不思議な事だろう。それに比べると、まだ仮想通貨や株券は、いきなり価値がなくなるかもしれないと思われる点で、通貨ほどみんなが信じているわけではないようだ。

科学革命と帝国主義

大航海時代とか、帝国主義とか、歴史で習った事がある。それは、ヨーロッパから世界へ向けて旅立った。この本で目から鱗だったのは、ヨーロッパ人が進んでいたとか、力を持っていたからそうなった訳ではないという点だった。

当時、中国やトルコなど、力のある大国はあった。しかし、船を出してよそへ侵略しに行くことはなかった。それまでは、帝国が領土を広げるのは、隣接している地域に限っていた。それを、ヨーロッパ人たちは未知の大陸へと進出していったのだ。

それは「無知の発見」が鍵を握る。それまでは、神が全てを知っているので、聖職者は何でも知っているという認識だったらしい。ところが、科学が発達すると、人類はまだ何も知らないという認識が生まれた。それによって、知りたい、調べたいという欲求が生まれ、未知の土地へ行き、そこで調べたい、知りたい、という具合になったという訳だ。科学が先に発達したヨーロッパが、大航海時代を迎えたのにはそういった理由があったのだ。私はてっきり、ヨーロッパは寒いから、資源が乏しくて他の土地を求めたのだろうとか、元々狩猟民族で、血気盛んだったからとか、はたまた科学が発達して強力な武器があったからとか、そんな風に考えていた。

拡大する資本主義

資本主義とは、利益を投資していくものだそうだ。お金を稼いだら、そのお金で事業を拡大し、より多くの人を雇い、物を作り、多く売る。そうやって循環しながら豊になっていく。

また、資源には限りがあるというのは間違いだとも筆者は言う。今までも、このままでは石油がなくなって終わりだと思われたが、かつては知り得なかった新しいエネルギー物質を見つけたり、生み出したりして、資源はなくなっていない。だが、この先も人類が次々に新しい資源を見つけていけるかどうかは、誰にも分からない。

また、人類以外の動物にとって、今は最悪な時代だと言う。資本主義の歯車の中で、家畜がどんな目に遭っているかが記されていた。私は動物愛護者ではないのだが、それでも実情を目の当たりにすると気分の良い物ではない。可愛そうとか、人間のエゴの為に動物を犠牲にするのは間違っているとか、そんな単純な話ではないのだが、それでもやっぱり、今の状態は聞くに堪えない。動物を利用したり、食べたりというのは間違っていないと思うが、今はあまりにもやり過ぎではないか。けれども、拡大して行かなければならない資本主義の前では、やり過ぎを止める術がない。ビーガンになろうとは思わないのだが、どうにかならないものか。その結論はまだまだ私の中では出ない。

超ホモ・サピエンスの時代

最後に、今後サピエンスとは違う物が我々に取って代わるのではないか、と書かれていた。人工知能(AI)だとかアンドロイドだとか、サイボーグだとかロボットだとか、はたまた宇宙人だとか。昔からSF映画に出てくる未来の敵はそんな感じだが、もっとあり得るのが死なない人類だ。不老不死。ただし、事故で死ぬこともあるから不死ではなく非死だとか。それは、医療の為の研究としてなされ、いつか皆がそうなるかもしれない。そして、いつしか我々とは形も、認知機能も、全く違うものになっているかもしれないと。

いずれにしても、私たちは大丈夫。と、思いきや、今の研究スピードだと、案外10年後には他の種にサピエンスが取って代わる日が来るかもしれない。だが、思いの外障壁があって研究が進まないかもしれない。その前に、地球がどうにかなってしまうかもしれない。

最後の?

最後の締めくくりが、

「私たちが自分の欲望を操作できるようになる日は近いかもしれないので、ひょっとすると、私たちが直面している真の疑問は、「私たちは何になりたいのか?」ではなく、「私たちは何を望みたいのか?」かもしれない。この疑問に思わず頭を抱えない人は、おそらくまだ、それについて十分考えていないのだろう。」

だった。うーん、イマイチ分からない。すまぬ、私はまだ十分に考えていないようだ。

色々面白かったが、ちょっと怖い気もする、サピエンス全史であった。

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