本場オーストリアで
昔むかし、妹とオーストリアのウイーンに行った事がある。私が社会人1年目で、妹がまだ学生だった。
お茶でもしようと入ったお店で、ケーキも食べようという事になった。メニューの中からどれにようか迷っていると、店員のマダムが話しかけてきた。
「ザッハトルテはもう食べた？」
「まだです」
「ウイーンに来たら、ザッハトルテを食べなきゃ。オススメよ」
の、ような事を言っていたはずだ。多分英語だったのだろう。ドイツ語は分からないので。
ガイドブックでザッハトルテが有名だというのは見ていたものの、実生活上では知らなかったこの「ザッハトルテ」もしくは「ザッハートルテ」。まあ、せっかく勧めてくれたし、食べてみた。そのはずだ。
何しろ20年以上も前の話。味も忘れた。そして、その後日本でも、ザッハトルテは食べていないような気がする。
誕生日に
少し前に、生協のカタログで小さいザッハトルテを見かけた。お手頃価格だったが、誕生日でもないのにケーキを買うのも気が引けた。だが、どうもそのケーキが美味しそうで、けっこう迷った。でも買わなかった。
誕生日が近づいて来て、ザッハトルテを作ってみようかと思った。レシピを検索した。何だか、けっこう大変そうだった。買った方がよさそうだ。失敗したら勿体ないし。
それなら、誕生日にザッハトルテを買ってこようと思った。とはいえ、時々行く近所のケーキ屋には売っていない。そこで、近くでザッハトルテが売っている店を検索した。そりゃ、東京には売っている店があるにはある。が、一番近くて新宿だった。遠くもないが、繁華街にわざわざ行くのも・・・。
まあ、誕生日は他のケーキでもいいしな、と思ったが、やっぱり気になる。久しぶりに食べたい。
というわけで、Ａｍａｚｏｎで検索。あるじゃないか。今はバレンタインに間に合うようにという感じで売っている。私の誕生日に間に合いそうなお店が一つだけあったので、そこで注文した。
ザッハトルテが来た
誕生日の前日に、冷凍のザッハトルテが届いた。箱が良い感じ。これを冷蔵庫に入れた。
翌日、つまり誕生日当日。歯科医院から帰ってきて、少し遅れてのお昼を食べ、ザッハトルテの事が気になる。
誕生日ケーキって、パーティーをして、最後に食べるものだが、これだと既にお腹いっぱいで、イマイチよく味わえない。もしくは、自分の分は翌朝に食べたりする。けれども、せっかく自分の誕生日だ。気を遣ってみんなの前で切るのではなく、好きなタイミングで勝手に切ってもいいではないか。
というわけで、お昼に切る事にした。
うっかり見逃すところだったが、配達された段ボール箱の中から、
「濃厚ザッハトルテを美味しく食べるコツ！！」
などと書いてある紙を見つけた。そこには、冷蔵庫で５～６時間解凍した後、常温に20分ほど戻してから切ると書いてある。そして、包丁の先から差し込んで、スーっと入ってから【カツッ】と止まったら少し力を入れて切ると書いてある。
もう既に遅い時間で、20分待つのがしんどい。1時からお昼を食べ始めて、1時5分頃に冷蔵庫から出した。1時25分まで待つべきだったが、20分頃に痺れを切らして切り始めるチョコナッツ。せっかちというか、がっついていると言うか。
ザッハトルテを切る
あら、うちの果物ナイフ、先が折れてるから、突き刺す事が出来ない。困ったな。どうせ先がとがっていないなら、ステーキ用のナイフにしようか。これなら、付いてしまったチョコを安全に食べられる。
というわけで、ステーキ用のナイフで切り始める。大丈夫だ、切れた。だが、お皿に移さずに切ったので、切ると入れ物の外へ少しこぼれてしまう。あれま、あれまとチョコのかけらを口に入れると、旨い！
包丁を温めてからカットするときれいに切れると書いてある。それは知っている。が、しなかった。後から考えれば、コーヒー（カフェインレス）を飲むためにお湯を沸かしたのだから、そのお湯をナイフに掛けて、拭いてから切れば良かったと思った。何せ、コーティングされているチョコが割れてしまったから。
ちょっと汚くなってしまったが、なるべくきれいな二切れを、義母と義理の妹にあげるためにタッパに移す。そして、自分の分だけお皿に乗せ、残りはまた箱にしまって冷蔵庫へ入れた。
さあ、食べる前に写真を撮ろう、と思ったら、母から電話が掛かってきた。お誕生日おめでとうの電話だったが、父の具合が悪く、来週入院するなんていう話をされた。その間、ケーキはお預け状態。それはいいのだが、もう2時になってしまうではないか。切るのが大変だったので。
ザッハトルテを食べる
やっと電話が終わり、コーヒーをいれてフォークを使って食べる。既にちょっと胃が重たかったのだが、これは何だか別腹か？というくらい、さくさくっと食べられた。そうだ、うたい文句にあったっけ。下の方にサクサクした物が入っていて、しつこくなく、最後まで食べられるとか。二重の意味でサクサク食べられた。
あ！写真撮り忘れた。
まあ、いいか。けっこう断面汚いし。どうも、Ａｍａｚｏｎの写真のような断面が出ない。
翌日の食感
みんなにも食べさせて、残ったものも私が夜に食べた。そして、夫は翌朝に食べると言ったが、一切れ全部では多いので、私と半分こしようと言った。大歓迎。
夫が朝ご飯を食べ終わった後、半分残ったケーキを食べた。けっこう常温に置いてから時間が経っていた。50分くらいかな。そうしたら、中の層になっている生チョコ部分が柔らかい！びっくり。いつも冷たい内に食べていたので、柔らかさを感じていなかった。
柔らかいと美味しいなぁ、と思って、これも食べられて良かったーと思った。だが、一切れの半分なのにちょっとしつこい。そう、チョコは温かい方が甘く感じる。チョコに限ったことではないが。
ほら、チョコレートは好きでも、ホットチョコレートというか、チョコレートドリンクは甘ったるくて好きではない人、多分いる。私も溶けたチョコは好きでも、ほんの少しでけっこう。溶かしたチョコをカップ一杯食べたら、鼻がむずむずしてしまいそうだ。
というわけで、常温にして甘ーいザッハトルテもいいのだが、あまり量を食べられない。食べる量を少なくしたいなら、むしろその方がよかろう。けっこう冷たい方が、さっぱり食べられる。決して固いというわけではないので。
アプリコットジャムと生クリームは？
それにしても、チョコレートケーキと言ってもけっこう色々だ。クラシックショコラと言われる、固めのスポンジのみ、という感じのケーキもあれば、ジュピターだったかな、チョコレートソースのようなどろーっとしたチョコが全体に掛かっているようなケーキもあるし、ほとんどがチョコムースだったり、あと、ココアスポンジとココア入りの生クリームで出来ているケーキもある。
けれども、チョコレートケーキが食べたい時って、本当のチョコレートをイメージしている。だから、今並べたようなケーキだと、ちょっと違うと思う時がある。けれども、昨日食べたザッハトルテは、フォークで切れるが、けっこうちゃんとしたチョコレートでコーティングされていて、食べるとチョコレートを食べたいという欲求を満たしてくれる。ココアスポンジとチョコレートを一緒に食べられて、これぞチョコレートケーキ、という感じがした。
なるほど、私が好きなチョコレートケーキは、ザッハトルテだったのか。
いや、待てよ。ザッハトルテの印象は・・・アプリコットジャムと生クリーム、ではなかったか？
そう、自分でザッハトルテを作ろうかなと思った時、この二つを買ってこなきゃと思ったのだ。もちろんチョコレートとココアもだけれど。それで、アプリコットジャム（あんずジャム）が入っているのって、別のケーキだったかな、私の勘違いだったかなと思った。
そして、今この記事を書こうと思って、ザッハトルテの事を一応調べてみたら・・・やっぱりそうだった。あんずジャムを塗って、チョコレートでコーティングするのだ。そして、そう！生クリームを添えて食べるのだ！そうそう、なんか、完全に泡立てていないようなどろーっとした生クリームで、しかも甘くない生クリームを一緒に食べるのだ。そうだ、今思い出した。ちょっとミルクが苦手な私は、
「これ、本当にあった方がいいのかな？」
と疑問に思いながら、郷に入っては郷に従え精神で、生クリームを付けながら食べた・・・ウイーンでの記憶が少し蘇った。
あれ、でもザッハトルテのレシピを検索した時も、アプリコットジャムは出てこなかったような。それに、昨日食べたザッハトルテも、一応調べてみたが、原材料にあんずジャムは入っていなかった。そうか、今はこれでいいのか？それとも、日本に輸入された時に削除された？そんなわけないか？
しかし、早く思い出していれば、せめて生クリームは用意したのにな。いやー、でもやっぱり、本場の味は全然違ったような気がする。意外とザッハトルテは好きでは無かったかも。
とにかく、この「濃厚ザッハトルテ」はすごく美味しかった。ザ・チョコレートケーキという感じがした。
いつか、どこか本場の味が味わえる店に行ったら、ちゃんとしたザッハトルテを是非食べてみたいと思う。